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JリーグPRESSBACK NUMBER
湘南ベルマーレ“新スタジアム建設案”に平塚市長は「かなり無理な提案を一方的に…」クラブと自治体のすれ違いは“埋められない溝”なのか
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2023/08/30 11:02
新スタジアム建設に向けて、ホームタウンである平塚市との折衝を重ねている湘南ベルマーレ。だが、実現に向けた課題は少なくない
「新設より改修のほうが費用はかさみます」
1987年に開場した平塚競技場に屋根をつければ、Jリーグのスタジアム基準を満たすことは可能だ。だが平塚商工会議所『スタジアム建設促進委員会』の鈴木成一委員長はこう語る。
「改修で屋根をつけるのも選択肢のひとつだと思います。ただ、新設より改修のほうが費用はかさみます。合理的な選択として、新しいものを作ったほうがいい、というのが私たちの考えです。改修ではなく新設ならば、補助金も出ます」
ベルマーレが計画するのは、通年で稼働できる多機能複合型のスタジアムだ。球技専用としてJリーグはもちろん女子サッカーやラグビー、アメリカンフットボールなどの試合開催も見込み、アーティストのライブも想定する。
新スタジアムには、建設時に最新の映像設備を組み込む。これにより、たとえばベルマーレの試合時にスタジアム内の大型ビジョンで立体映像を楽しんだり、アーティストのライブを臨場感そのままに配信したりすることができる。これは大きなセールスポイントになるはずだ。
さらには、平和教育にも結びつける。
新スタジアムの建設予定地にあげられる平塚市総合公園は、大戦中に兵器工場が置かれていた。45年7月には米軍の空襲を受けた歴史もある。
今年1月の「2023新体制発表会」で、湘南ベルマーレの眞壁潔代表取締役会長はこう話している。
「平塚市総合公園は終戦の年に空襲を受けて、たくさんの方が亡くなった跡地なんです。新しいスタジアムには、戦争はいけないという永遠の平和を発信できるような機能を持たせたらどうか、という我々の思いが入っています」
Jリーグのスタジアム基準では、「新設及び大規模改修に際しては、原則として屋根はすべての観客席を覆うこと」と明文化されている。J2のツエーゲン金沢のホームスタジアムとして来春から稼働する金沢ゴーゴーカレースタジアムも、全1万席が屋根で覆われている。
屋根のカバー率不足で制裁を受けているベルマーレが、現在のままの平塚競技場でホームゲームを開催していったら──どこかのタイミングで、J1ライセンスを失ってしまう可能性がある。新スタジアムの建設が決まっても、実際に稼働するまでには数年を要する。スピード感のある検討が求められるのだ。