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湘南ベルマーレ“新スタジアム建設案”に平塚市長は「かなり無理な提案を一方的に…」クラブと自治体のすれ違いは“埋められない溝”なのか 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byMasashi Hara/Getty Images

posted2023/08/30 11:02

湘南ベルマーレ“新スタジアム建設案”に平塚市長は「かなり無理な提案を一方的に…」クラブと自治体のすれ違いは“埋められない溝”なのか<Number Web> photograph by Masashi Hara/Getty Images

新スタジアム建設に向けて、ホームタウンである平塚市との折衝を重ねている湘南ベルマーレ。だが、実現に向けた課題は少なくない

平塚市長は「かなり無理な提案を一方的に…」

 気になるのは、新設にかかる費用と場所だろう。

 国内の建設現場は、建築資材の高騰に直面している。円安による輸入価格の高騰、ロシアのウクライナ侵攻による燃料高騰などが原因だ。

 2015年3月に開場した南長野運動公園総合球技場(長野Uスタジアム)は、総事業費がおよそ80億円だった。17年2月開場のミクニワールドスタジアム北九州はおよそ100億円である。

 ベルマーレは約140億円を見込む。スタジアム新設に関わる法人『株式会社湘南メディアスタジアム』が70億円を集め、半分の70億円は補助金の活用を含めて平塚市に負担してもらいたい、というのがベルマーレ側の希望だ。

 人口25万人の平塚市にとって、70億円という金額は決して小さいものではない。ただ、70億円は返済されない資金ではない。加えて都市公園事業に関する国交省の補助金などを活用すれば、その分財政負担は大幅に減額できる。

 スタジアムは湘南メディアスタジアムが指定管理者として運営管理を行なっていく計画なので、平塚市は毎年のランニングコストを負担しなくてもいい。ベルマーレ側の試算では15年間で110億円の税収効果、3800億円の経済効果が期待できるという。

 平塚商工会議所『スタジアム建設促進委員会』の鈴木委員長が言う。

「箱モノを作ると聞いたら、脊髄反射的に『えっ』と思うところはあるでしょう。それは分かります。ただ、新スタジアムの建設は未来への投資です。最初は拠出してもらいますが、70億円プラスアルファが税収として返ってきます」

 スタジアム建設とその後の管理運営を目ざす『株式会社湘南メディアスタジアム』では、新スタジアム建設の第一候補を平塚市としている。レモンガススタジアム平塚のある平塚市総合公園内の別の場所に建設する計画だが、ここに齟齬が生じている。

 平塚市の落合克宏市長は、総合公園内での建設はかねてから難しいと伝えてきた、と言う。70億円の負担も含めて「かなり無理な提案を、一方的に突きつけられたと感じている」と話す。

 また、総合公園以外の候補地(民有地)に建設する案に対しても、平塚市は「新スタジアム計画に対する市の考え」をまとめている。ベルマーレ側に回答した資料には、「市内には学校、社会教育施設など老朽化した公共施設が多くあるため、市が費用負担しながらスタジアムを優先して建設する必要性、公平性を説明する必要があります」「経済効果の算出根拠と、費用対効果に関する説明を、詳細にしていただく必要があります」といった課題が列挙されていた。

【次ページ】 両者のすれ違いは“埋められない溝”なのか

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