スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
ラグビーW杯を揺るがす“危険タックル”への判定…「レッドか、イエローか」微妙な判定にリーチら選手の本音「ハッキリ言って、レフェリー次第」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2023/08/29 11:06
出場停止明けのイタリア戦で見事な「低いタックル」を仕掛けるリーチマイケル。サモア戦での一発退場がチームの意識を変えたことは間違いないが……
リーチはメンバー発表の会見の席で、こう話していた。
「個人としては全部、ロータックルにしようかなと思ってます。ダブルタックルのところでどうしても高く行ってしまうので、これからすべて下のタックルに集中したい」
イタリア戦後のインタビューでも「低いタックルはできたと思います」と話していて、日本全体として低いタックルの意識付けができたのは、レッドカード問題におけるポジティブな面である。
W杯を前に、選手たちが困っているのは、お咎めなしなのか、イエローなのか(10分間の一時的退場)、レッドなのか、基準が曖昧だということだ。リーチの話によれば、合宿中に全員で映像を見たが、イエローとレッドの線引きはハッキリしなかったという。「ハッキリ言って、レフェリー次第」というのがリーチの感想だった。
二転三転した「ファレル劇場」
今回のW杯のひとつのポイントは、「80分間を15人で戦えるか?」ということになりそうだ。
イエローの10分なら耐えられるかもしれない。しかし、8月5日のフィジー戦のように開始早々に数的不利になってしまったら、イングランド、サモア、アルゼンチンに対して勝ち目は薄くなる(その後、相手の人数が減ることもあり得るのだが)。
これは日本だけの問題ではない。
イングランドはキャプテンを務めるオーウェン・ファレルが日本戦まで出場停止になっている。
今月はヨーロッパで「ファレル劇場」が開かれた印象で、8月12日のウェールズ戦でファレルにレッドカードが出された。彼は今年1月にも出場停止処分を下されており、”常習犯“でもある。ところが、その3日後にオーストラリア人3人による独立委員会(欧州のシックスネーションズの管轄)が、レッドをキャンセルした。この「減刑」の背後には大物弁護士、リチャード・スミスの存在があったと言われる。