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フィンランドが「絶対フリーにしたくなかった」“ある選手”とは? バスケW杯で日本代表大金星…大逆転の最終クォーターに何が起きていたのか 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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posted2023/08/28 17:02

フィンランドが「絶対フリーにしたくなかった」“ある選手”とは? バスケW杯で日本代表大金星…大逆転の最終クォーターに何が起きていたのか<Number Web> photograph by FIBA

自国開催だった2006年大会パナマ戦以来のW杯白星となったバスケ日本代表。過去11戦全敗だった欧州勢から初勝利を挙げた

 それでも河村は焦らなかった。実際、シュートが決まらない要因としてはW杯で使用される公式球が普段とは違うことや、守備のタスクなどいくつもあった。ただ、言い訳となりそうな要因があるなかで、状況を冷静に分析して、原因を見つけ、自らに言い聞かすように語っていた。

「やはり『実戦に対する慣れ』の部分です。復帰してからはまだ1カ月くらいしか経っていないですけど、体力面で(スタミナが追い付かず)疲れてきて、シュートが短くなったりしてしまう。そこが1番の問題かなと思うので。試合に対する慣れとともに、確率は上がってくると思います。ただ、練習はしっかりしているので、そんなに不安は感じないです」

 その言葉通りドイツとの開幕戦で3Pがなかなか入らなくても、河村の姿勢は変わらなかった。自分のためにも、3Pシュートを多用するチームのコンセプトを守るためにも、アウトサイドからのシュートを打ち続け、最終的にはチーム2番目となる9本の3Pを放っていた。

 だからだろう。「フィンランド戦でしっかり決められたのは、前のドイツ戦でシュートが入らなくてもきちんと打ち続けた効果があったのでは?」と問うと、河村は間髪入れず、即答した。

「それはありますね! 本当にここ最近、ずっと打ち続けて入らなかった悔しさというのはあったし、チームメイト、ファンのみなさん、本当にたくさんの方に迷惑をかけてきたので。この試合だけではなくて、今後もシュートを決め続けることが一流の選手だと思うし、1試合だけではなく、また明後日(のオーストラリア戦で)良い結果を残して、アジア1位を取りたいなと思います」

「アジア1位」の成績を残すこと。これが、今回のW杯での日本の目標である。

「パリ五輪出場」を引き寄せたフィンランド戦の金星

 実は今大会は、来年に控えるパリ五輪の予選もかねている。そのため、アジアから参加している6カ国のなかで1位の成績を残せば、五輪の出場権を手にできる。8月27日の試合終了時点で、アジアのチームで勝利を挙げたのは日本だけだ。

 チームを背負い、代表の顔役として悲壮な覚悟をしている渡邊は、大会前に「勝てない選手がいても仕方がない。パリ五輪の出場権をとれなければ、代表を引退します」と宣言し、チーム全員に奮起を促していた。

 フィンランド戦前日の練習後に、その渡邊とともにアジア他国の成績について話しながらバスへと乗り込んでいったのが河村だった。

 河村は、フィンランド戦後のロッカールームで渡邊にこう声をかけた。

「まだまだ代表引退なんてさせませんよ」

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