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フィンランドが「絶対フリーにしたくなかった」“ある選手”とは? バスケW杯で日本代表大金星…大逆転の最終クォーターに何が起きていたのか 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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posted2023/08/28 17:02

フィンランドが「絶対フリーにしたくなかった」“ある選手”とは? バスケW杯で日本代表大金星…大逆転の最終クォーターに何が起きていたのか<Number Web> photograph by FIBA

自国開催だった2006年大会パナマ戦以来のW杯白星となったバスケ日本代表。過去11戦全敗だった欧州勢から初勝利を挙げた

 ドイツ戦で本領を発揮できなかった富永は、フィンランド戦の絶望的に見える状況下でも、そのチームコンセプトを体現し続けていた。

 第3Qの残り2分33秒。富永が強気にシュートを打って日本は2点を返した。

 そこから1分もしないうちにアウトサイドでパスを受けた富永は、今度は迷うことなく3Pシュートを放ち、きれいにリングに通した。さらに、第3Q残り3秒の時点で馬場の3Pも決まり、63-73の10点差にして最終Qを迎える。

 そして、最終Q開始から1分9秒がたった時点で富永が再び3Pを決め、ついに7点差に。その直後、フィンランドのパスを富永がパスカットしそうになったのを見て、フィンランドはたまらずにタイムアウトをとった。

フィンランドが「守備戦術」を変えた理由は…?

 タイムアウトでの細かい指示はわからなくても、1つだけハッキリしたことがあった。フィンランドが、守備の優先順位を変えてきたことだ。

 そこからフィンランドは「富永に徹底してシュートを打たせない」守備戦術を採用してきた。具体的には、日本の選手が富永に対してスクリーンをかけようとするときには、2人がかりで富永に寄っていき、シュートチャンスを与えない動きを徹底してきた。

 第4Q残り7分26秒。ボールを持った富永に日本の帰化選手であるジョシュ・ホーキンソンがスクリーンをかけにいく。これに対応してきたフィンランドの2選手が富永に寄せてきたのを見て、富永はフリーになっていたホーキンソンにパス。ホーキンソンがこれを決め、4点差に追い上げを見せる。

 キャプテンの富樫勇樹が、あの時間帯を振り返る。

「富永のシュートが(立て続けに)入って、相手は何か違うことをしないといけなくなって。でも、ローテーションは上手くできず……。あれは、すごく大きかったと思います」

 日本はフィンランドが採用した、それまでとは異なる守備戦術を逆に利用できるようになった。富永の3Pシュートの脅威がフィンランドの戦い方を変え、それが試合の流れを完全に変えたのだ。

 残り6分48秒。今度はボールのないところで、河村が富永のすぐ横をドリブルでアタックする。前半であれば河村と富永のマークが入れ替わることもあったシチュエーションだが、相手は富永をフリーにさせたくない。そのため、河村の動きへの対応が遅れた。それを察知した河村が馬場にパスを預けると、すぐにアウトサイドに出てリターンパスを受ける。そして、迷うことなく3Pシュートを決めてみせた。

【次ページ】 ゲームをコントロールした「Bリーグの申し子」河村

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