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鎌田大地ラツィオ初陣取材…どころか「頼むからラジオに出てくれ!」日本人記者が逆取材された件「シコクってどこ?」「ダイエ、ダイチ!」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byMarco Rosi-SS Lazio/Getty Images
posted2023/08/26 06:00
セリエAデビューを飾り、トレーニングを重ねる鎌田大地。ラツィオの本拠オリンピコが背番号6を待つ
「サッリは昨季のリーグ2位に満足することなく、より強く、より高いレベルのチームを作ろうと企んでいる。昨季中からスピードと攻撃力があり、アタッキングサードからゴール前まで頻繁に飛び込める鎌田のことをチェックしていたから、彼を獲得できそうだとロティート会長の口から聞いたときには望外の喜びだったそうだ。サッリ・ボールは鎌田の加入でよりスピーディに、よりダイナミックに変貌できる可能性を得た。決して表には出さないが、サッリは本当に興奮しているんだよ」
鎌田がラツィオへ加わったのは8月4日だ。プレシーズンキャンプをチームと過ごしておらず、並の選手なら試合本番へ起用できるようになるには2カ月はかかるというのが現地の見解だ。ただし、去就が定まらない時期にも地道に自主練習をしてきたという鎌田のコンディションはコーチ陣の想像以上で、指揮官は新しいキーマンに地方クラブ相手のゲームで一刻も早くイタリアの水に慣れさせたかったのだろう。
しかしセリエA、レッチェは甘くなかった
だが、セリエAは甘くなかった。
前半26分に主将インモービレが先制点を奪ったまではよかったが、鎌田が55分にベンチへ退くとラツィオはスカスカになった。逆に前半からハイプレスを続け、交代策で運動量を保ちながらサイドアタックで攻め達磨と化したレッチェから85分と87分に立て続けに失点、痛恨の逆転負けを喫した。
記者席の隣では、地元局アナウンサーがラジオ中継のマイクをオフにして放送禁止用語を連発している。レッチェのセリエA開幕戦白星はクラブ史上初めてらしく劇的勝利に興奮するのはわかるが、肩がつく距離で怒鳴られ通しの僕の耳は痛くてたまらない。
仏頂面サッリが鎌田起用について問われると
試合後の指揮官サッリは、無様な逆転負けに仏頂面だった。気難しい性分でも知られるサッリ親分は、不甲斐ないプレーをすれば自分の選手たちにも容赦ない。きつい言葉でカミナリを落とした。
「後半のうちの守備はお笑い草だった。2、3度追加点のチャンスがあったのに、同じようなミスをくり返してひっくり返された。(中盤より前がコレクティブに動かず)DFたちは自分たちだけで守備を強いられたんだから、それはきつかったに決まっとる。うちはチームとして守らなかった。後半のゲームに対する態度は容認できん」
ただし、記者から鎌田の開幕スタメン起用はギャンブルが過ぎたのではないか、と問われると指揮官は数秒間黙り込んだ。