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鎌田大地ラツィオ初陣取材…どころか「頼むからラジオに出てくれ!」日本人記者が逆取材された件「シコクってどこ?」「ダイエ、ダイチ!」
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byMarco Rosi-SS Lazio/Getty Images
posted2023/08/26 06:00
セリエAデビューを飾り、トレーニングを重ねる鎌田大地。ラツィオの本拠オリンピコが背番号6を待つ
そして、背番号6の名は出さず「新加入した選手は全員新しい環境に慣れる必要がある。時間が必要だ」とかばった。サッリの親心だろう。鎌田はやはり相当に期待されている。
「頼むから、うちのラジオ番組に出てくれ!」
「頼むから、うちのラジオ番組に出てくれ!」
開幕に先立って、同業者エルマルに頼まれた。エルマルの本業は『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のラツィオ番記者だが、その傍らでローマの地元ラジオ局パーソナリティもやっている。TVやラジオのローカル局で司会やキャスターの副業を持つ記者は少なくない。聞けば、ラツィオ情報ばかり24時間流しているファン御用達のラジオ局という。
エルマルは「うちの局には1日あたり8万人のリスナーがいる」と胸を張った。十万、百万単位の数字が出てこないので日本の読者は拍子抜けするかもしれないが、アジア圏のような巨大人口都市がほぼ皆無の欧州にあって、人口約275万の首都ローマでの1日8万とは彼らにとって十分誇れる数字なのだ。
おそらくこれはイタリアに限らず、スペインやフランス、ドイツといった西欧諸国でも同様だと思うが、ラジオは21世紀の今でも市井の重要なコミュニケーションツールであり、その中でも地元サッカークラブ情報は最重要コンテンツの1つだ。
チャンピオンズリーグだろうが練習場での会見だろうが、取材現場には必ず地元ラジオ局記者が付き物だ。ゴール裏スタンドに通うような熱心なファンは大概朝から晩までラジオに聞き耳を立てているから、ラジオ番組は地元のオピニオン形成に重要な位置を占めている。
エルマルとはネタを交換し合う仲なので頼みを断れず、“鎌田と日本のサッカー事情について話してほしい”というリクエストを受けることになったのだった。
シコクってどこ? ブカツって何?
番組名は『9 Gennaio 1900(ノヴェ・ジェンナイオ・ミッレノヴェチェント)』。何とも長ったらしいが、ラツィアーレ(※ラツィオファンの愛称)なら、すぐにクラブ創設記念日(1900年1月9日)のことだとピンとくるだろう。
平日の夕方5時ごろ、スマホの通常通話で生放送に繋がれ、司会エルマルの「ベンヴェヌート(ようこそ)!」でやり取りが始まった。クラブ史上初の日本人選手である鎌田と日本のサッカー事情に興味津々のリスナーを見越して、エルマルは僕を質問攻めにした。