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「甲子園の優勝投手はプロで大成しない」は本当か? 松坂大輔がいた1998年以降を検証「プロ入り64%」「高校で硬式野球をやめた例も…」
text by
太田俊明Toshiaki Ota
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/08/26 11:07
甲子園の優勝投手は大成しない――。定説は本当か? 四半世紀の優勝投手を検証してみた(写真は2016年優勝投手の今井達也)
「優勝投手は大成しない」はウソ?
プロで1ポイントもあげていない「Cランク」は、14人中3人(21%)。2010年の島袋洋奨(興南/元ソフトバンク)、大阪桐蔭で春夏連覇を果たした2018年の柿木蓮(日本ハム)と根尾昂(中日)が挙がる。
島袋は引退後、母校・興南高校の指導者として奮闘中。高校時代、大阪桐蔭で圧倒的な存在感を示していた柿木、根尾はともにプロ5年目を迎えており、そろそろ結果がほしいところだ。
整理すると、プロ野球の投手となった割合が64%。プロに進んでからSランクの成績を上げたものが14%、Aランクが21%、Bランクが43%、Cランクが21%(いずれも四捨五入)となっている。
SランクとAランクを“大成した”と捉えると、その割合は36%。Bランクの若手現役組の中から、いずれAランクへ昇格する可能性が高い選手を踏まえると、5割近くが“大成”に分類されそうだ。
プロに進まなかった投手も含めた優勝投手全体数からみると、22人中5人(23%)がプロで大成。さらにAランクへの昇格有望組を加えれば3人に1人はプロで大成となりそうで、「甲子園優勝投手は大成しない」の通説は、ここ四半世紀に限って言えば必ずしも当てはまらないことがわかる。
「世代No.1投手」と比較
こうした検証には、異なる母集団との比較も重要になってくる。比較する対象として“各年の世代ナンバーワン投手たち”をピックアップして、彼らのプロでの“大成度”を見てみよう。
その年の全国ナンバーワン投手をピックアップする基準としてプロの評価――その年のプロ野球ドラフト会議で1位指名された高校生投手――をリストアップした。
1998年の松坂以降、22年までの25年間で、ドラフト1位指名されてプロに進んだ高校生投手は69人(松坂や田中のようにドラフト1位指名された優勝投手は除く)。また、大学に進んでいれば在学中の2019年ドラフト以降の投手は検証から外す。その結果、検証対象投手は、1998年ドラフトから2018年ドラフトまで、計57人になる。