ところが、いよいよ同種目に本格参戦しようという矢先だった。

　砂田は右腕を骨折。手術するほどの怪我で、走れない時期が続いた。その間、同世代の三浦は日本記録保持者となったばかりか、数々の国際舞台で実績を挙げるなど、どんどん先に進んでいった。

日本記録保持者の父は「3年で結果がでなきゃ辞めろ」と…

　結果的に思わぬ足踏みをしたことで、砂田の3000m障害への本格的な挑戦は遅れた。それでも、その才能はすぐに開花することになる。

「父からは『3年で結果が出なきゃ、陸上をやめちまえ』と言われていました。だからこそ、1年1年が勝負だなと思っていました」

　ようやくケガも癒え、社会人3年目となった昨季、砂田は好記録を連発する。5000mでは13分台に突入し、1万mでも28分22秒の好記録をマークした。そして、本腰を入れた挑戦が始まった3000m障害では約2年ぶり、わずか2回目のレースにもかかわらず、いきなり8分43秒という好タイムを叩き出したのだ。

　それでも砂田にとっては、これでようやくスタートラインに立てたという思いだったのだろう。

　好記録にもまだまだ課題が多いことも自覚しており、今年の1月には他チームに出向いて走り込むなど課題克服に努めた。そのかいもあり、今季のトラックシーズンを迎えると砂田の快進撃が始まった。

　4月の織田記念では、東京オリンピック代表の青木涼真（Honda）に敗れたものの、青木らと競り合って８分36秒まで記録を伸ばした。5月のセイコーゴールデングランプリは8分32秒とさらに自己記録を更新（7位）。6月の日本選手権では、三浦に次いで2位に入り、日本歴代10位となる8分26秒をマークした。

　7月のアジア選手権では初めて「日の丸」を付け、優勝した青木には敗れたものの、砂田もきっちりと銅メダルを獲得した。

　飛ぶ鳥を落とす勢いとはこのことだろう。

　この1年で砂田は驚異的な成長曲線を描いてきた。

　そして、世界陸連（WA）より世界陸上の出場資格者に追加され、8月8日には日本代表が決まった。3000m障害への本格挑戦2年目にして、世界への扉が開かれたのだ。

　いままさに伸び盛りの真っ只中――。いずれは「三浦君や青木さんを越えていける選手になりたい」と目論むが、まずはブダペストで思い切った走りを見せてくれるだろう。

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