「短距離走」の日本中学チャンプが「長距離走」で日本代表のナゼ…“あの”三浦龍司を超えられる？ “破天荒サラブレッド”砂田晟弥の数奇な陸上人生

　いよいよ8月19日に世界陸上ブダペスト大会が開幕する。

　今回、日本勢の活躍が期待されている種目の１つが男子3000m障害だ。フィニッシュまでの間に障害物（男子は高さ91.4cm）を28回と、着地点に水濠がある障害を7回越えなければならない過酷なこの種目。2021年の東京オリンピックでは当時10代だった三浦龍司（順大）が日本人として初めて7位入賞を果たし、その後も国際大会で活躍を見せている。今回も三浦には入賞はもちろん、メダルにも期待がかかる。

　もともと長距離種目の中では駅伝ファンなどに馴染みも深い5000ｍや1万ｍなどに比べて「隙間種目」の印象も強かった同種目。だが実はこの種目が日本で活況を呈している。

東京五輪3000ｍ障害で7位入賞を果たした順大の三浦龍司。駅伝ファンにも馴染みの深い選手　©JMPA

すべての写真を見る（17枚）

　高校生では佐久長聖高（長野）の永原颯磨（3年）が今夏のインターハイで三浦の持っていた高校記録を7秒も更新。大学生でも早大の駅伝主将・菖蒲敦司（4年）が大学生の世界一を決めるFISUワールド・ユニバーシティゲームズで銅メダルに輝いた。三浦に続けとばかりに、新たなスター候補が続々と誕生しているのだ。

三浦龍司らとともに出場する”異色のランナー”

　今回の世界陸上ブダペスト大会で初めて世界に挑む砂田晟弥（プレス工業）もその一人だろう。

　ただ他の選手と違うのは、砂田が異色の経歴をもつランナーだということだ。

　父・貴裕さんは100kmマラソンの元世界記録保持者で、マラソンでも活躍を見せた。小さなころから陸上が身近にあった砂田が競技を始めたのは自然な流れといえるかもしれない。ちなみに、妹の芽緯は高校3年時のU20日本選手権で800mのチャンピオンに輝いている。

　特筆すべきは中学時代の砂田の専門種目が長距離ではなく短距離だったことだ。しかも全国大会では400mで日本一に輝いている。高校では400mハードルにも挑戦し、激戦区の近畿地区で8位に入賞した実績がある。しかし、本人は短距離に限界を感じ、上のレベルで戦うために長距離への転向を決意したという。

【次ページ】　高校卒業後は大学ではなく実業団へ