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「息子を明徳に入れたい」スマホNGの寮生活も“なぜ部員100人”? 明徳義塾・馬淵史郎が語る「隠れて携帯持っとるやつもおるやろ」
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKei Nakamura
posted2023/08/18 11:02
監督生活34年、明徳義塾を率いる馬淵史郎(67歳)
馬淵 それも聞くけど、どこの高校やったかな、ダミーの携帯を持っていて、それを出したりするらしいんよ。昔から一緒よ。悪いことするヤツは、そういう知恵を働かせる。俺らの頃やって、そうやったもん。ただ、今とはやることが違うだけで。
今どき、漫画あかんなんて学校はないやろ
――馬淵さんは三瓶高校(愛媛)時代、同級生の話によると野球一筋、「どマジ」だったんですもんね。
馬淵 でも、周りに悪さするヤツはおったで。中国には「上に政策あり、下に対策あり」っていう言葉があるんやって。いくら上が上手いことコントロールしようとしても、民衆はそれに応じてその政策を出し抜く方法を考えつくものだという意味らしいけど。
――今は寮内で漫画とかも読めるんですか。昔は、高知新聞しか読めないという時代もありましたけど。
馬淵 全然、読めるよ。今どき、漫画を読んだらあかんなんて学校はないやろ。
――馬淵さんは一見、堅物のように見えるかもしれませんが、時代に応じて、ものすごく変化していますよね。練習時間も、練習方法も、選手への接し方も。だから30年以上、こうして勝ち続けてこられたんでしょうね。
馬淵 俺は柔軟だよ。フレキシブル。朝と夕方で違うこと言ってることもあるから。愛媛の田舎に帰るとね、友だちに「まだ監督やってるんか」みたいなこと言われるんやけど、「勝ってるからやれとるだけや」って。僕は2年間、春夏計4回あるチャンスのうち、1回も甲子園に行けんかったら、いつでも辞めようと思っているんですよ。それは女房にも言っているんです。でなきゃ、監督生活34年で、37回も甲子園に行けないでしょう。自分がやった年数より行ってるんやから。
名将の引き際
――馬淵さんは、衰えないですよね。
馬淵 衰えるね。
――衰えてますか?