赤堀颯。「歴代最高」とも呼ばれる1学年上のキャプテンは、聖光学院が求めるものを全て備える信念の塊のような男だった。昨年夏の甲子園で日大三、横浜、敦賀気比と優勝経験のある強豪がひしめく「死のブロック」に入ろうと、「日本一になるためには、どこが相手でも変わらない」とチームを盛り立てるような、抜群のキャプテンシーがあった。

　守備で二遊間を組んでいたことで接する時間が多く、師と仰ぐほど慕っていた高中にとって、赤堀は光だった。

赤堀颯キャプテンのもとでベスト4に進出した昨夏も同じ仙台育英高に敗れた　©︎Hideki Sugiyama

　昨年のシーズンオフ。赤堀からキャプテンを受け継いだ高中は、自信を失っていた。

　秋の東北大会では準決勝で敗れ、センバツ出場を逃した。消沈するチームを鼓舞するため「鬼になろう」と、感情を押し殺しながら厳しく接しても響かない。ミーティングで声を張れば張るほど、選手たちからのこんな声が聞こえてくるようだった。

　お前の熱さ、息苦しいよ――。

前キャプテンが現キャプテンへかけた「言葉」

　まとまらないチーム。監督やコーチからも叱責を受ける高中は八方塞がりになっていた。

「ずっと悩んでました。自分がチームに言えば言うほど、仲間との距離が離れていくような気がして……。本当に苦しくて、苦しくて、逃げ出したい気持ちでした」

　実際、キャプテンの重責に耐え切れず、他の選手への交代を直訴しようかと真剣に考えるほど、高中は追い詰められていた。

「聖光のキャプテンは、お前しかいない」

　引き留めたのは、赤堀だった。大学進学を控えた今年2月に毎日のように練習に顔を出してくれた前キャプテンに、高中は教えを請うた。

「もっとチームと向き合え」「ちゃんと仲間と会話してるか？」。ひと言、ひと言に重みがあった。一方で、選手間でのミーティングでは「高中がこれだけチームのことを思ってキャプテンをやってくれているんだぞ」と、訴えてもくれた。

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