「変わらずですよ。僕が投げるシチュエーションは負けているときが多いと思うので、やっぱり野手が反撃していけるような雰囲気を作れるピッチングをしたいですよね。だからマウンドを降りた後もベンチの中で率先して声を出していますし、追い上げムードになって野手が打ってくれたときは本当にうれしい。とにかくやれることを一生懸命やるだけですよ」

　真剣な面持ちで上茶谷はそう言うと、次のようにつづけた。

「正直、僕が投げない展開の方が、チーム状況としてはいいのかもしれません。ただチームが勝ちつづけると、リリーフ陣も疲弊してきますし、僕がもしかしたら、そういう（勝ちの）展開で投げなければいけないかもしれないので、なにが起こってもいいように自分の力を出せる準備はしておきます」

困った時にマウンドに上がってくれる、チームとしては頼もしい存在となっている　©JIJI PRESS

先発に未練はないのか

　ひとりの投手として矜持を感じられる言葉。最後にひとつ訊きたいことがあった。果たして先発に対してはどのような思いを抱いているのだろうか。未練はないのか。そう問うと、上茶谷はしばらく考え、口を開いた。

「先発で投げたいかって言われたら、投げたいですよ。ただ、自分で『どこでも投げます』って言っていますし、今はやれと言われたポジションで自分の仕事をやるだけです。正直、以前は先発したいなって思いが強かったんですけど、ここにきて、だんだんそういう感じもなくなって、投げられるのならば、チームに貢献できるならば、いつだってマウンドに上がりたいって気持ちが強くなっていますね」

　そう言うと上茶谷は口角を上げ微笑んだ。決して眩いばかりのスポットライトが当たるポジションではないが、チームメイトの誰もが、延いてはファンも上茶谷のありがたさを理解しているはずだ。それに「どこでも投げる」とあれば、これだけの安定感のあるピッチング、今後の展開によっては先発でも勝ちパターンでも上茶谷の出番はきっとあるはずだ。

　急場のピッチングはもちろん、今季電撃加入したトレバー・バウアーの“スピーチライター”として、ユーモアをもって常にチームを明るく照らしてくれる唯一無二の存在である上茶谷の活躍に、これからも期待したい。

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