「すごくいいですよ。ヤス（山﨑）さんが引っ張ってくれて、チームが負けていようが、チャンスだろうが、ピンチだろうが、ブルペン陣みんなで声を出していこうって。野手やファンの人たちが見ているわけじゃないんですけどね」

慣れた？　まだまだですね

　すでに30試合投げているが、リリーフとしての“慣れ”という部分ではどうだろうか。そう尋ねると、上茶谷は「いや、まだまだですね」と言ってかぶりを振った。

　上茶谷の場合、勝ちパターンのリリーフのようにある程度、準備をするタイミングが決まっているわけではなく、有事に備えスクランブル態勢で待機しておかなければならない。決してイニング頭から投げられるわけではなく、そこは苦労しているところだという。

「僕は先発のときもあまり立ち上がりがよくなかったんですけど、そういう部分においては鍛えられていますね。中継ぎの場合、マウンドに上がったら、最初から100％で行かなければいけないわけですから」

三嶋語録1「カミチャは投げすぎ」

　この、いきなり100％の状態でゲームに入ることに腐心した。

「とくに開幕当初は上手くいかなかったんです。だからヤスさんとか三嶋（一輝）さんとかにアドバイスをしてもらって、ようやく頭から100％を出せるようになったんですよね」

　上茶谷が、そのことについて三嶋に尋ねると「ああ、簡単だよ」と事も無げに言ったという。紆余曲折の果てリリーフとしてクローザーにまで上り詰めた三嶋の言葉は説得力を持っていた。

「カミチャ（上茶谷）はさ、ブルペンで投げ過ぎなんだよね。それじゃシーズン最後までもたないし、ブルペンではパパッと投げて、とにかく気持ちだけ作っておいたほうが、マウンドでドンッて100%出せるからさ」

2021年には守護神を務めた三嶋　©Hideki Sugiyama

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準備の“しすぎ”

　この言葉は上茶谷にとって目から鱗だった。

「僕は最初、完璧に準備した方がいいと思って、ブルペンで投げ込んでいたんですよ。けど三嶋さんは、それは違うぞって。ブルペンで100%出して、マウンドでちょっとおかしいなって感じてしまうと修正ができなくなってしまうって。たしかに投げ込んで準備して、ダメな場合は考え込んでしまう。なるほどなって。実際に三嶋さんのアドバイスは大きかったですし、他にもトレーニング方法を教えてもらったり、本当に新しいモノを学んでいるなって感じなんです。先発での経験は、ほとんど生かされない別世界というか」

三嶋語録2「もう誰のせいでもないんだ」

　とくに先発との大きな違いは、自分が出したわけではないランナーを背負い、投球しなければいけない場面があることだ。当初、上茶谷は満塁のシチュエーションで、自分がマウンドに上がることを想像できなかった。「だって精神的にきついじゃないですか」と、上茶谷は正直に言った。たしかに、もし打たれれば前に投げていたピッチャーの失点は増え、負けに繋がる可能性もなくはない。

　三嶋に恐る恐るそのことを尋ねると、またしても平然と言ってのけた。

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