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開幕直前に先発→リリーフ転向を言い渡されても…「どこでもやります」防御率1.57と大奮闘、DeNA上茶谷大河に聞いた「先発への未練はないのか?」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/14 11:01
今季、中継ぎとしてビハインドの場面で好投を続け、30試合登板、防御率1.57の成績を残している上茶谷。“縁の下の力持ち”にじっくり話を聞いた
「カミチャ、こんな言い方もあれだけど、もう投げるしかないんだよ。できるかぎりのことをしてマウンドに上がったら“もう誰のせいでもないんだ”ってくらいの気持ちで腹をくくれないと、力を発揮することはできないよ」
11回裏、一死満塁の場面で…
この三嶋の言葉を聞いたすぐ後の5月21日のヤクルト戦(横浜スタジアム)、上茶谷は同点の11回表、一死満塁の場面でマウンドに向かった。
「マウンドに行く前はすごく嫌だったんですよ。同点だし、ここで打たれたらどうしようって……。けど、ブルペンカーに乗っているときに、ふと三嶋さんの言葉を思い出したんです。そうしたら、もうやるしかないんだって気持ちが高まり向かっていくことができたんですよ。本当、いろいろ相談しておいてよかったなって」
上茶谷はピンチを凡打と三振で切り抜けると、12回表もマウンドに立ち、無失点で事なきを得た。
「力を出すためには、腹をくくるしかない。リリーフっていうのはこういうことなんだなって、深く理解できた場面でしたね」
持つべきものは、百戦錬磨の心強い先輩たちである。
今年のフォームは“素”
さて、好投がつづいている上茶谷だが、今季目を引くのが、そのダイナミックなフォームである。テイクバックを大きくし、左腕を高く上げ壁を作り、左足を振り上げるようなフォームは、見ていて気持ちよささえ感じる。
「僕は毎年、毎年、フォームに迷っていたんですけど、もう“素”というか、自分が投げやすいフォームを追求しようと思ったんですよ」
これまで球速アップや怪我の防止を念頭に、いろいろなフォームを試みてきたが、昨年は学生時代の投げ方に戻し、今季はそれを更にバージョンアップしている印象だ。
「トレーニングでピラティスを取り入れたり、体が変われば、フォームは自然に変わっていくのかなって。自分としては全身使って投げている感覚だし、その中でバランスが取れていると思いますね」
フォークやシュートも投げたいなとは思うけど…
かつてフォームで迷子になっていた上茶谷は、もういない。
「性格上、いろいろ試したくなっちゃうんですけど、今年はそれを一旦やめようって。やろうと思えば球速を求めるフォームでも投げられるとは思うんです。けど、150キロの速球を投げたとしても簡単に打たれてしまう世界。あくまでも対バッターを意識しての工夫が必要になります」