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開幕直前に先発→リリーフ転向を言い渡されても…「どこでもやります」防御率1.57と大奮闘、DeNA上茶谷大河に聞いた「先発への未練はないのか?」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/14 11:01
今季、中継ぎとしてビハインドの場面で好投を続け、30試合登板、防御率1.57の成績を残している上茶谷。“縁の下の力持ち”にじっくり話を聞いた
軸となるストレートは140キロ台後半、これに数種のカットボールと120キロ台のスライダーが主な武器となる。昨年投げていたシュートやフォークは、今季はあまり使ってはいない。
「やっぱり僕はスライダー系のピッチャーなんで短いイニングを投げる上で、自信のあるボールで勝負しないといけない。フォークやシュートも投げたいなとは思うけど、ボールになって無駄球になるのがもったいないというか、テンポが悪くなってチームに流れをもっていけなくなるような気がするんです」
上茶谷が意識している“指標”、VAA
ストレートに関しては、捕手陣からベース上での球威が上がっていると聞くが、そこになにか工夫はあるのだろうか。そう尋ねると上茶谷は、「僕がデータとして見ている指標のひとつに『VAA(Vertical Approach Angle)』というものがあって、それをとくに意識していますね」と答えた。
『VAA』とは簡単に言うと、ピッチャーが投げたボールがベース上を通過する角度のことだ。メジャーでも注目されている数値であり、リリースポイントからベース上を通過するボールの角度が0度(水平)に近ければ近いほど、空振りやフライに打ち取りやすいというデータが出ている。
「だから自分の感覚的には“潜る”っていうか、イメージとして下から上に軌道を描くように投げているんです。実際にその数値がいいときは、しっかり抑えられている。やっぱり投げるときの“球持ち”が重要になってくるんで、(リリースポイントを)前に前にってイメージをして投げていますね」
スパイクは今永先輩との合作
工夫と言えばもうひとつ、先輩の今永昇太とあれこれ意見を寄せ合い、スパイクにあることを施している。
「スパイクは、通常両足“金具”か“ポイント”のどちらかなんですけど、今永さんと話し合って疲労軽減や、より強く面でマウンドを押せるように、軸足を“ポイント”にして、踏み込む足を“金具”にしているんです。実際これがいい感じで、ここまで効果が出ていると思いますね」
左右異なるスパイクとは聞いたことがなく驚きだが、常に投手としての可能性を求めている今永との共同作業というのは非常に興味深い。考えることを止めなければ、ヒントはどこにでも転がっているということなのだろう。
正直、僕が投げない展開の方が…
さて、いよいよシーズンも終盤に突入していくわけだが、誰かがやらなければいけないビハインドロングのポジション、上茶谷としては、今後どのようにアプローチしていこうと考えているのだろうか。