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「ぶっ飛ばされんじゃないか」アントニオ小猪木が“本物の猪木”に会った日…本人の前でネタ披露も「モノマネやってよ」「今やったんですけど…」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/08/07 17:22
京王百貨店新宿店で8月15日まで開催中の「燃える闘魂・アントニオ猪木展」にて。モノマネ芸人のアントニオ小猪木が、猪木の魅力を熱く語った
小猪木にとってアントニオ猪木は「歴史上の人物」
小猪木はしみじみと猪木との思い出を振り返った。
「猪木さんの前だと、何も喋れなくなっちゃうんです。ちょこんと座っているだけです。猪木さんが靴のCMをやっていた時、千葉の鴨川でその企業のイベントがあったんです。前日から泊りに行って、お酒もご一緒したんですが、話はうまくできませんでした」
では、憧れの存在からどんなことを学んだのだろうか。
「一度だけ六本木のバーで聞いたことがあるんです。『猪木さんの表現力はどこで学んだんですか?』って。猪木さんは『リズムを崩すのがオレのプロレス』って笑っていました。たとえば動物園の熊なんかは檻の中をぐるぐる回っていて、何周かすると見ていて飽きちゃうでしょう。でも、猫は違う。突然うなったかと思うと、ウギャーと俊敏に動きますよね。猪木さんは猫だなぁと思った。1、2で止まって5、6で動く。5、6で動かないと思ったら7、8で動き出す。動いて動いて、また止まる。クールな佇まいに秘めた闘魂が、最後に爆発するんです」
小猪木は猪木とブルース・リーも似ていると思ったという。
「アリの『東洋人でオレに挑戦する奴はいないか?』という発言は、ブルース・リーのことが頭にあったんじゃないかと思うんです。『リーとオレが絡んだら面白いぞ』と。でも、それを猪木さんが持っていっちゃった。ブルース・リーと猪木さんは年齢も近いでしょう」
さらに小猪木は語気を強めて、こんなことを口にした。
「今こそ、猪木プロレスの再確認が必要ですよ。みんなが同じリズムで戦うプロレスじゃつまらないでしょう。やっぱり“猫のファイト”じゃないと」
猪木がいなくなって、小猪木の人生は変わったのだろうか。
「周りから見たら変わっていないと思います。でも、闘魂を見せつけるあの瞬発力を、もっと出していかなきゃいけない。猪木を感じさせたい。小猪木を通して、アントニオ猪木をもっと知りたくなったと思わせたい」
小猪木にとってアントニオ猪木は「歴史上の人物」なのだという。
「リンカーン、ナイチンゲール、エジソン、アインシュタイン、そしてアントニオ猪木。もちろんモハメド・アリもね。教科書とか、子供が読む本にも猪木さんの話を入れてほしいなあ」
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