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「ぶっ飛ばされんじゃないか」アントニオ小猪木が“本物の猪木”に会った日…本人の前でネタ披露も「モノマネやってよ」「今やったんですけど…」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/08/07 17:22
京王百貨店新宿店で8月15日まで開催中の「燃える闘魂・アントニオ猪木展」にて。モノマネ芸人のアントニオ小猪木が、猪木の魅力を熱く語った
初めて闘魂ビンタをもらった日
話は前後するが、小猪木が初めて本物の猪木に触れ合った日から、ビンタをもらうまでの話も聞かせてもらった。
「1989年3月、猪木さんは第1試合に出ていました。会場は新座市総合体育館で、相手は後藤達俊。試合を終えた猪木さんが、体育館の壁際で試合を見ていたんです。『あっ、猪木だ。チャンス!』と思って、とっさに体が動いた。握手をしてもらいに走って、『握手お願いします』と手を差し出した。ぶっ飛ばされんじゃないかと思ったけれど、猪木さんはすごく柔らかく握手してくれました」
時間にして2秒くらいだが、その時の猪木の手の感触を小猪木は忘れることができない。
「藤波さん、今日も『猪木さんは怖い』って言っていましたよね。でも、ファンには優しい。それにしても、当時の猪木さんのオーラってどんだけ異常だったんだろう……」
小猪木はその後も、ファンとしてたびたび猪木と邂逅している。
「その次は1989年の7月、参議院選挙の時の銀座だった。スポーツ平和党の旗がたくさん並んでいて、そこで一緒に写真を撮らせてもらったんです。その次が立教大学での講演会で、初めてビンタしてもらいました。いや、秋だったから学園祭だったのかなぁ……」
「モノマネやってくれよ」「今やったんですけど…」
それから時は流れ、2006年1月。ついにアントニオ小猪木として、猪木と「闘魂神社」で遭遇する。
「猪木さんが『ビンタされたいヤツ出てこい!』と。さすがに躊躇しました。猪木さんは目立ちたがり屋は嫌いでしょう。そうしたら、お兄さんの猪木快守さんが『行ってこい。喜ぶから。ファンも喜ぶから』って背中を押してくれたんです」
小猪木は西口プロレスの赤の上下のジャージ姿でステージに上がった。
「猪木さんが笑顔でマイクを渡してくれて、ファンのみんなが『小猪木、小猪木』って言ってくれているんですよ」
小猪木は猪木の目の前でネタをやることになる。
「ドキドキしながら『話を聞くときのアントニオ猪木の顔』と、『プロレススーパースター列伝の漫画に出てくる猪木の笑顔』の2つをやったんです」
さすがに猪木の方を見ながらはやれなかった。ネタをやり終えてマイクを返すと、猪木にこう言われた。
「せっかく出てきたならモノマネやってくれよ、って。『今やったんですけど……』で大爆笑でした」
ここでも小猪木は、猪木の闘魂ビンタを浴びた。