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「令和闘魂三銃士」も清宮海斗も…“プロレス界の未来”がG1で全滅した現実をどう見るか? 海野翔太は嘆き節「ただの噛ませ犬だな、この野郎」
posted2023/08/08 17:03
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
新日本プロレス『G1 CLIMAX 33』の優勝戦は8月13日(両国国技館)に予定されている。だが、ノアから参戦していた清宮海斗、新日本の「令和闘魂三銃士」と命名された海野翔太、成田蓮、辻陽太の夏は、8月5日の大阪府立体育会館で終わってしまった。
Aブロックでは“鉄砲玉”となったゲイブ・キッドが無差別攻撃を仕掛け、相手が勝ち点を重ねる機会を奪った。プロレス界の「未来」と定義された20代の4人の試合はそれぞれ面白かったが、勝ち上がれなければG1の性格上、胸を張ることはできない。
“双子の兄”を替え玉として招集…辻陽太の奇策
辻はリーグ戦の最後に、双子の兄を投入するという奇想天外な頭脳プレーで勝利して3勝目を挙げることができたが、頭からキッドにかき回されてしまった感は否めない。
「このG1が始まる前に、オレはゲイブに言った。このG1は誰でも出られるG1。ゲイブ・キッドは特にそうだと。フタを開けてみりゃ、みんなも気づいているはずだ。それがいかに失言だったかを。正直あそこまで、あいつがヒール・レスラーとしてジーンブラストしているとは思わなかった。認めよう。Aブロックの台風の目はオマエだった。ただ、勝ったのはオレだ。いいんじゃねえのか、LA道場から反旗を翻して、今のオマエ、生き生きしているよ。そんなことより、オレのこの大事な歯が、緩んじまった。外れかけてないか。この歯のメンテナンスに、いくらかかっていると思ってるんだ」
辻は開幕前日の記者会見でもキッドの奇襲に遭い、新調した赤いスーツがやぶれてしまった。
入場してきた“辻陽太”を背後から襲ったのは、案の定キッドだった。ただ、同じような経験を重ねれば、何かしら対抗手段を講ずるものだ。
ガウンのシルエットを見た時「ちょっと細いな」と筆者は思ったけれど、辻だと思っていた。格好や髪型は真似できるかもしれない。だが、顔をここまで似せることは特殊メイクでも使わなければ無理だろう。
すると、ガウンなしの辻陽太が花道に現れて、キッドにやられている辻を見ている。ニヤっとした笑みを浮かべて。
「アイツ誰や?」
異変に気付いた客席からこんな声が上がった。