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メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「オオタニはエンゼルスに“何を残すか”を意識している」現地記者が語る、大谷翔平の“今季の変化”「WBCでは輝いて見えた。同時に思ったのは…」
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byNanae Suzuki
posted2023/07/04 11:02
今季、活躍を続ける大谷翔平を取材する記者はどう見ているのか。地元・LAタイムズ記者のディラン・ヘルナンデスに話を聞いた
その一方で、ヘルナンデス記者は、他人にはうかがい知れない、大谷特有のメンタリティーの変化にも目を向けていた。過去数年の取材を経て、同記者は「誰も彼の本音は分からないだろうし、自ら伝えるタイプではない」と、率直な印象を語る。その一方で、今季の大谷には、他の選手からは感じられない、特有の空気があるとも言う。そこには、野球だけでなく、他競技も取材してきたコラムニストならではの嗅覚がある。
「エンゼルスにいるからこそ、大谷はレガシー(チームに何を残すか)を意識しているような気もします。ヤンキースやドジャースのような強いチームで勝つのではなく、久しく勝っていない弱小球団を勝ちに導くこと。かつてサッカーのディエゴ・マラドーナがナポリ(イタリア・セリエA)を、NBA(バスケットボール)のマイケル・ジョーダンがシカゴ・ブルズを強くしたように、大谷は他の野球選手がしてこなかったようなことを考えているような気もします」
母校監督から聞いた「彼は誰も歩いたことのない道を行く」
同記者は、漠然とそう考えたわけではない。17年、同記者は大谷の母校である岩手・花巻東高を訪ね、野球部の佐々木洋監督に話を聞いた。その際、大谷が中学卒業時、関西の強豪校からの誘いを断ってまで、地元・岩手の高校に進学したことを知った。当時の大谷が、何を求めていたのかは分からない。ただ、同監督はヘルナンデス記者に大谷の行く末を暗示するかのうように言葉をつないだ。
「彼は誰も歩いたことのない道を行くんじゃないかな」
その時点で、大谷の恩師が残した言葉の本当の意味を、同記者は正確には理解できていなかった。
質問者から目を逸らすことのない取材対応
だが、今は少しずつ理解できるようになったという。