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「野球をやめようと思っていた」カリブ海で育った青年が、決死の覚悟で受験した巨人トライアウト…冷静な左腕が“古巣対決”で力んだ理由 

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梶原紀章(千葉ロッテ広報)

梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara

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photograph byChiba Lotte Marines

posted2023/06/29 11:00

「野球をやめようと思っていた」カリブ海で育った青年が、決死の覚悟で受験した巨人トライアウト…冷静な左腕が“古巣対決”で力んだ理由<Number Web> photograph by Chiba Lotte Marines

今季からロッテに加入したC.C.メルセデス(29歳)。序盤こそ白星から遠かったが、現在3勝と先発ローテーションの一角を担っている

「同じラテン系の選手は多かったけど英語は分からない。早く球場に行ってトレーニングをして、英語の勉強もしないといけないし、家に戻って自分で料理も作らないといけない。最初は困難な事が多かった」

 結局、マイナー止まり。メジャー昇格することは出来ず、失意の中、母国に戻る。

 日本との縁はこのころからあったのかもしれない。母国に戻って、野球をやめようかとも思ったが、もう一度野球をする機会を得た。2016年に広島東洋カープのドミニカアカデミーでプレーをすることになる。ここでメルセデスはコントロールを磨く。

「月曜日から金曜日まで毎日、ブルペンに入ったんだ」と、毎日100球近く投げ込んだ。それは今まで経験したことがないことだっただが、そのおかげで力を抜いて投げるピッチングフォームを確立。現在のような制球を身につけた。そして、その投球術がジャイアンツのトライアウトでも光り、2017年に育成選手として日本に渡った。

「納豆以外ならなんでも食べられる」

 ジャイアンツでは選手寮に入り、日本の若手選手と寝食を共にした。異国の生活に慣れるにはその土地に溶け込むことが大事であることはアメリカでの日々で学んでいた。だから選手たちと積極的に会話を重ねながら日本語を覚え、初めて見る食材も多かったが食堂で出される日本料理にもチャレンジした。

「日本の文化やスタイルに溶け込みたいと考えていた。納豆以外ならなんでも食べられる。美味しいよ」

 それは野球でも同じ。クイックはもとから出来る方だったが、開きが早いフォームを指摘され、足のあげ方などに工夫をこらし、徐々に日本型のスタイルを身につけた。2018年に支配下登録され、ローテーション投手として活躍した。

【次ページ】 相棒たちへの感謝「セイジは面白くていい人」

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