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「野球をやめようと思っていた」カリブ海で育った青年が、決死の覚悟で受験した巨人トライアウト…冷静な左腕が“古巣対決”で力んだ理由 

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梶原紀章(千葉ロッテ広報)

梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara

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photograph byChiba Lotte Marines

posted2023/06/29 11:00

「野球をやめようと思っていた」カリブ海で育った青年が、決死の覚悟で受験した巨人トライアウト…冷静な左腕が“古巣対決”で力んだ理由<Number Web> photograph by Chiba Lotte Marines

今季からロッテに加入したC.C.メルセデス(29歳)。序盤こそ白星から遠かったが、現在3勝と先発ローテーションの一角を担っている

 メルセデスが感謝するのはリードをしてくれた捕手陣。当時は小林、大城卓三、宇佐見真吾(現・中日ドラゴンズ)が主にマスクを被ってくれた。特に小林はいつも「ナイスボール!」と言って気持ちを乗せてくれた。

「とても面白くていい人。彼はボクのその日の一番いいボール、自分が自信あるボールを中心に配球を組み立てて投げさせてくれる捕手だった。自分の得意球であるスライダーとカーブをうまく使ってくれた。とても助かったよ」

 2018年7月10日、神宮球場でのヤクルトスワローズ戦で来日初勝利をつかむと、その約1カ月後の8月2日の横浜DeNAベイスターズ戦では初の完投勝利。初完封も同年8月24日に東京ドームで行われた阪神タイガース戦で記録した。この日は打っても左中間にタイムリー2ベースを放ち、初打点も記録したことで思い出深い。この時のウィニングボールとユニホームは母国の自宅に飾ってある。そんなふうにトントン拍子に成功を重ねていった。

「ジャイアンツでは速い球で、勢いだけで抑えるのがピッチングではないことを学んだ。低めを中心に自分のボールを投げることが出来れば抑えることは可能。興奮しすぎることなく冷静にチームメートを信じて投げることを覚えたんだ」

岡本、戸郷とは今も「思い出は永遠」

 メルセデスは今季から戦いの場をパ・リーグに移した。それでもかつてのチームメートとの交流は続く。

 来日した際、岡本和真内野手に「日本に戻ってきたよ」と連絡し、健闘を誓い合った。戸郷翔征投手がWBCで好投した際には「ナイスピッチング!」とメッセージを送った。

「(マリーンズに移籍してからも)色々な人から連絡をもらったよ。オープン戦で初登板した時も連絡をもらった。チームが違えど、思い出は永遠だし、友情も大切にしたい」

 懐かしの古巣との対戦となった5月31日のジャイアンツ戦では、冷静を売りにする男が珍しく力んでしまった。初回から150キロ超えを連発、3者連続空振り三振という最高の立ち上がりだったが、初回から飛ばしたことで徐々に球威を失った。2回に1点を失うと、その後も失点を重ねて5回4失点で無念の降板。

「ついつい力んでしまったね。あれは自分の本来のあるべき投球ではなかった。凄く反省をしている。ジャイアンツ時代に学んだことと、まったく逆の事をしてしまったよ」

【次ページ】 原点回帰「優勝したい」

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