サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「中村憲剛、内田篤人、阿部勇樹ともよく…」森保一監督の“表に出ない才能” W杯ドイツ戦、大劣勢も「西野朗さんは想定内と語った」理由
text by
山本昌邦&武智幸徳Masakuni Yamamoto&Yukinori Takechi
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2023/06/20 11:03
日本代表3月シリーズでの森保一監督。名波浩コーチらが入閣した第2次政権でどんなチームを作るか
憲剛、内田、阿部ともよく話していると
山本 前半は完全にドイツの分析が上回りましたよね。こういう風に日本はプレスをかけてくるだろうというところで、ラウムを上げてきたと思うし、それによって伊東の能力がピッチ上から消された。日本の強みやプレスが機能しないように準備されていた。でも、前半を0-1で踏ん張ったことで、見事に修正が機能して、今度はドイツが後手、後手に回っていった。
前半だけ見たら、ドイツのゲームプラン通りです。プレスをかいくぐって、崩してペナルティーエリア内に進入して点を取る。実際のゴールはPKでしたが、そこまで入り込んだから、日本はPKにつながる反則を犯すことになった。ただ、先制点を取ったことでドイツは自分たちがやっていることに間違いはないと安心したのかもしれない。安心の壁1枚向こうには慢心があるんですよ。このままやれば、後半も何点でも取れると思った。「このままでいい」「さっさと2点目、3点目を取ってカタをつけようぜ」みたいなノリでハーフタイムを過ごしたことが想像できます。
武智 それが日本には、好都合だった。
山本 後半、想定外のことがドイツに起きたと思うんですよね。あれだけ攻撃のカードを次々に切ってくるとは思わなかったはずなので。
武智 日本が、内股に対して内股透かしみたいな、予想外の“返し技”を持っていたのはすごいと思います。布陣こそ、5-4-1で守っているように見えるけど、最終ラインとアンカーの遠藤を除くと、ピッチにいるのは攻撃の選手ばかりみたいな。75分の堂安の同点ゴールに関わったのが、57分に投入された三笘、71分に投入された堂安、75分に入ったばかりの南野拓実だったことも鮮烈というか、神がかり的でした。日本代表を見ている我々も知らなかった形なわけだから、それをドイツが知るわけがない。スカウティング全盛の情報化時代の逆手をとるみたいなことをW杯本番でやってのけた。本当にすごいと思いました。
山本 多くの経験をしないと、そういう発想は出てこないですよね。そして経験値がないと、考えが浮かんでも実行できない。森保監督はロールモデルコーチで来ている中村憲剛や内田篤人、阿部勇樹ともよく話していると聞きます。本当に貪欲ですよ。
ああいうことをやると墓穴を掘るもの
武智 試合後、キャプテンの吉田麻也が「あまりにもプランどおりに事が運んでびっくりしています」とコメントしました。
山本 そういう準備に対応できる能力の持ち主がメンバーにそろっていたということだし、そのことを監督自身がよくわかっていたわけですよね。
武智 選手の戦術的なリテラシーは相当上がっているわけですね。一方、ドイツは67分にミュラーとギュンドアン、79分にはムシアラをベンチに下げてくれました。彼らがいなくなる度にホッとしましたよ。前半はミュラーを全然捕まえられなかったですから。ドイツで一番面倒臭い連中でしたもんね。
山本 ディフェンスの2番、リュディガーが浅野と並走しながら腿もも上げみたいな、余裕を見せるような走りをしていましたけど、ああいうことをやると墓穴を掘るものなんですよね。<#1「トルシエ編」、#2「オシム編」からつづく>