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「エンドウとケンゴはいい選手だ。だから“走れ”と解説で言え」オシムが山本昌邦へ密かに伝えたこと「オシムさんは必ず相手の監督を…」
posted2023/06/20 11:02
text by
山本昌邦&武智幸徳Masakuni Yamamoto&Yukinori Takechi
photograph by
Takuya Sugiyama
止まったクルマを動かさなければいけない
武智 大いに期待された2006年ドイツ大会の日本代表はクロアチアと引き分けたもののオーストラリア、ブラジルに敗れてグループステージを突破できませんでした。そんな日本代表を「止まったクルマ」と表現し、みんなで一緒になって動かそうと就任会見で述べたのが後任のイビチャ・オシム監督でした。ジェフユナイテッド市原の監督に2003年に就任するや、瞬く間に優勝争いをするチームに変貌させ、05年にはJリーグカップでクラブにタイトルをもたらした名将です。山本さんはこの監督交代をどんな目でご覧になってましたか。
山本 2006年のドイツ大会で日本が敗退した後の帰国会見で、当時の川淵(三郎)キャプテン(会長)がジーコさんの後任について「オシムって言っちゃったね」と口を滑らせましたよね。次の監督はどうするんだろうと思っていたところに、それで私も「オシムさんなんだ」と知った感じでした。
武智 そのころ山本さんは古巣ジュビロ磐田の監督でしたから(2005年から06年6月まで)、対戦相手でもあったわけですね。
山本 そうですね。ジェフの監督をしていたオシムさんとは対戦しています。一番の印象は、とてつもなく選手を鍛えているなということでした。なぜ、選手の体がこんなに大きくなっているんだ、タフになっているんだと、対戦したときに驚きました。聞けば、めちゃくちゃハードなトレーニングをしていると。選手を成長させる監督というのがまず、オシムさんの印象でした。あとは若い選手を、傍(はた)から見ていると急に起用するわけじゃないですか。だから「すごいな」と素直に思っていましたね。
監督として対戦したときに「お前のチーム、大変だな」
武智 私自身はオシムさんが代表監督に決まったのは、望むところというか、いい選択だと思いました。ジェフでの仕事ぶりを見ても、オシムさん自身の実績を見ても。感慨にとらわれるのは、トルシエさんからジーコさんが、ジーコさんからオシムさんが仕事を引き継いだとき、その理由というか動機はおそらく同じだったことです。オシムさんも、ジーコさんと同様、直前のワールドカップ(以下、W杯)を見て、「もっとやりようがあるはずだ」「自分ならもっと日本代表から違うものを引き出せる」という歯がゆい気持ちがあったのだと思います。
山本 オシムさんは必ず相手の監督をリスペクトしてくれる人でした。磐田の監督として対戦したときに「お前のチーム、大変だな。30歳を超えた選手ばかりで、ビッグネームが多くて」と声をかけてくれたり。