バレーボールPRESSBACK NUMBER
深津三兄弟の“お兄ちゃん”が初の大舞台へ! 35歳セッター深津旭弘の遅れてきた全盛期「石川や藍とか若い選手のおかげで…今が一番いい」
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYuko Tanaka
posted2023/06/09 11:02
日本代表コーチを務める弟・貴之(左)と肩を組むセッター深津旭弘(35歳)。元日本代表の三男・英臣からもエールをもらった
2023年4月7日。パリ五輪予選が開催される今年度の日本代表登録選手37名の中に、昨季に続いて深津の名があった。
日本代表は、メインの大会となるネーションズリーグや世界選手権、五輪予選などを戦うAチームと、ほぼ同時期に行われるアジア大会やAVCカップなどに出場するBチームの2チーム編成で強化を進めている。昨年も同様で、深津はAVCカップに正セッターとして出場した。主将として牽引し、大会ベストセッターを受賞する活躍を見せたが、Bチームという立ち位置、そして年齢を考慮してか、「次こそは」と期待を向けても「もう呼ばれないでしょ」と冷静に笑っていた。
しかし、今年度の登録メンバーの選考はこれまでと大きな違いがある。それはフィリップ・ブラン監督が「メインの関田(誠大)が多くの経験を積み重ね成長している中、相棒を見出さないといけない」とセカンドセッター候補として、深津の名前を挙げたことだった。
ブラン監督がセカンドセッターに求める条件はシンプルで明確だった。
「チームをうまくコントロールできる選手。関田と同じパフォーマンスを発揮することは欠かせませんが、加えて、どの瞬間に入ってもいいパフォーマンスを発揮できること。かつ、リーダーシップを取れる、サイドアウトを取れる選手を求めています」
昨季も日本代表に選出されたサントリーサンバーズを連覇に導いた大宅真樹、Vリーグを制したウルフドックス名古屋の正セッター永露元稀と年下のライバルは多い。それでもブラン監督は「技術」「経験」「リーダーシップ」とさまざまな要素から深津を選択した。
いわば“Aチーム”デビューとなった中国との親善試合(富山県)でも、ブラン監督は深津のプレーに対し「いいトス回しをしてくれた」と一定の評価を下している。
「(深津は)とてもポジティブで、他の選手を後ろから、背中を押すことができる選手。そういった点も含め、彼の性格や、今日見せたパフォーマンスは最も私が必要としていた部分です」
19歳甲斐もエース石川も信頼
周囲を盛り上げ、盛り立てる。それは周囲の選手たちの言葉からも明らかだった。
今季初選出された19歳の甲斐優斗は「自分から声をかけるのが苦手な中、アキ(深津)さんから『対人やろうよ』と声をかけてくれたり、トスも1本1本確認してくれるのがありがたい」と信頼を寄せる。
代表への合流が最も遅れた石川も同様だ。
「途中から入ってきても、安定しているし、深津選手のトスワークで試合を進めてくれる。関田選手とは昨シーズンから合わせてきているのに対して、まだ合わせている時間は少ないですが、僕自身としてはそれほど心配していないし、深津選手が入ると雰囲気も上がる。何より、安心感があります」