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「あんまり勝ってるのも、しんどいんやで」岡田彰布の“虫の目・魚の目・鳥の目”【虎将ロングインタビュー】

2023/06/01
17年もの長い間、アレから遠ざかる西の名門球団に勝ち方を知る指揮官が戻ってきた。すると開幕から面白いように采配が的中、チームの変革に成功した。名将はどこまで野球を深く知るのか、その核心に迫る。

 甲子園には、タイガースと岡田彰布の蜜月をあらわす場所がある。

 室内練習場の2階廊下。白い壁には、重厚な木の額縁に入った11枚の写真が飾られている。藤村富美男、吉田義男、星野仙一ら球団史を彩った猛者たちと肩を並べ、岡田の姿もある。'05年優勝の胴上げや優勝トロフィーの隣で白い歯を見せるショットだ。

 ただ、1枚だけ、不思議な写真がある。

 1962年10月5日の優勝パレードを撮ったパネルには、観衆が路上にあふれ、選手が乗るオープンカーを囲む様子が収められていた。よく見ると大人に混じり、一人の少年がユニフォーム姿で車のなかに座っている。

「あれ、監督なんですよね。そう聞いたことがあります」

 そう話すのは、監督付き広報の藤原通だ。チームの支援者だった父勇郎の影響で、幼少期から阪神ファンだった岡田少年がパレードの写真に映っている――。代々、関係者に伝わってきた定説だ。

 しかし、当の本人は、写真を一瞥して首をかしげる。

「これな、分からんわ。乗ってたけど、どこに乗ってたかまでは憶えてないよ」

 岡田少年は当時4歳。記憶がおぼろげのまま、いつしか球団のなかで既成事実になっていった。

 岡田はタイガースとの深い縁に導かれるように、今季、15年ぶりに阪神の監督として戻ってきた。21世紀に入ってからチームが優勝したのは2度だけ。'03年の星野と'05年の岡田体制時だ。「勝ち方」を知る数少ない指揮官が、再び、超人気球団を率いる。さぞかし重責を感じているのかと思いきや、拍子抜けする答えが返ってきた。

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photograph by Takuya Sugiyama
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