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「映画のラストシーンに似ている」偉業目前のロッテ益田直也(33歳)が語る“ストッパーの葛藤”「たった3アウト。でも、その3つが難しい」
posted2023/05/30 11:00
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph by
Chiba Lotte Marines
千葉ロッテマリーンズの守護神として君臨し続ける益田直也投手(33歳)は、映画を見ている時に、ふとストッパーというポジションについて思うことがあるという。抑えの仕事は「ラストシーン」に似ている、と。
「映画を観ていて思うんですよね。どんなに面白くても、最後のシーンがダメなら、映画自体の評価が落ちる。ダメになる。その最後の場面と抑えは被るところがある。みんなで繋いで繋いできたものが、最後に打たれたら消えてしまうわけですから。最後のエンディングがダメなら全部崩れてしまう。映画を観ていて難しいなあと思います」
「3つのアウトが難しい」
エンターテイメントであるはずの映画を見ながら、そんな気持ちになる。それだけでもストッパーというポジションがいかにメンタル的に辛いかが分かる。娯楽の時間に、そこまで追い込まれたような心境にはなかなかたどり着かない。
「たったの3アウト。1試合9イニングの27アウト中、3アウトです。観ている人は簡単に思うかもしれない。『抑えて当たり前』と思われるかもしれない。でも、その3つが難しい」
勝ち投手の権利。勝ち越しに導いた打者たち。リードを守った投手陣。ファインプレーもあっただろう。さまざまなものが積み重なり、最後がある。もちろん、試合序盤のまだ少し牧歌的な雰囲気と試合最後のピリピリした状況は違う。繋がれた想い。勝利を願うスタンドのファン、テレビで見ている人たちの願い。すべてがそのマウンドに注ぎ込まれている。
「7回とか8回だと、まだ味方の攻撃もありますしね。9回はビジターだとサヨナラ負けになってしまう。それで終わり。繋いできたものがすべて消えてしまう」
そんな修羅場のような日々を重ね、益田はセーブを記録している。5月18日のオリックス・バファローズ戦ではZOZOマリンスタジアム通算100セーブを達成した。同一球場で100セーブを達成した選手はわずか3人。明治神宮球場でのヤクルト・高津臣吾、ナゴヤドーム(現・バンテリンドーム ナゴヤ)での中日・岩瀬仁紀、阪神甲子園球場の阪神・藤川球児といずれも日本を代表するビックネームで、パ・リーグでは初の快挙となった。
だが、それでもストッパーの辛さはこういった時にも消えることはない。益田の脳裏によぎるのはセーブに成功したことよりも失敗したことばかりだ。