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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「今思えば、箱根に対して本気でやれていなかった」神野大地のYouTube動画編集からトレイルランナーに…青学大卒・田村健人が再び走り始めた理由
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2023/06/04 11:01
日本で開催されたトレイルランの国際大会にも優勝し、世界大会の優勝も目指す田村健人。青学大の先輩でもある神野から受けたアドバイスとは…?
「最初は、優勝してやるか、みたいな感じで出たんです。でも、トレイルのレースのことを何も知らず、補給はどうしたら良いかも分からずに出たんです。そうしたらハンガーノック(エネルギー不足)とか脱水とか、全部一緒に来て。最後の10何kmはホント歩くのと同じくらいの速さでなんとかゴールまでたどり着いて……もうボロボロでした(苦笑)」
二度とやりたくないと思うほど、山にぎゃふんと言わされた。
やるからには本気でやれよ
2021年12月防府マラソンで神野が総合2位になり、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)出場権を獲得した。地道に練習を積み重ね、結果を出した姿を見て、自分も勝負したいという気持ちがわいてきた。
翌年1月、田村は神野、そしてマネジメント会社社長の高木聖也と宮崎合宿に行った。先が見えず、フラフラしているように見えたのか。ふたりに、「今後、何をしたいの?」と聞かれた。
「その時は、トレイルで頑張りたいと言いました。『やるからには本気でやれよ』とふたりに言われて、自分もその気持でいたんですが……」
それから1カ月後、神野と田村は宮古島合宿に入った。顔がまん丸で、宮崎合宿の最初の頃に戻ったような走りに神野は、さすがに怒りを抑えることができず、厳しい言葉を投げた。神野が振り返る。
覚悟がない奴は世界一になれるわけがない
「宮崎の時、全然走れなくて『それじゃダメだろ』ってタムケンに話をしたら、『ここから上げていきます』ってがんばったんです。でも、1カ月後、何も変わっていなくて。トレイルやりたいと言ったのは何だったのか。僕には『何もすることがないから、とりあえず自分のポジションをトレイルに置いておこう』っていう風に見えたので、『覚悟がない奴は世界一になれるわけがない』って言いました」
神野に厳しく言われたことで発奮した田村は、体重を落とし、小さなトレイルのレースに参加して優勝するなど、走る距離と実績を重ねていった。そうして6月、神野の富士見合宿に参加した。田村の姿を見て、神野は「変わったな」と思ったという。