「今回の優勝を伝えるとすごく喜んでくれました。両親は僕に箱根を走って欲しかったでしょうし、実業団でつづけて欲しかったと思うんです。でも、それを実現できなかった。だから今、僕がこういう舞台に戻って来て、走っていることがすごくうれしかったみたいです」

優勝をRETO RUNNING CLUBのメンバーに報告　©Tatsuya Matsuzaki

　ここからが田村にとって、本当のスタートになるわけだが、目標はもう決めている。

日本人トップの上田瑠偉さんに挑戦したい

「トレイルの花形は、100マイル（約160km）で、最高峰の大会がUTMBというんですけど、5年後にその大会で優勝したい。日本人では誰もまだ成し遂げていないんですが、今のままじゃダメですね。僕のマラソンの持ちタイムは、大学を卒業して10カ月後に出た湘南国際マラソンの3時間4分です。今、走れば2時間20分は切れると思いますが、世界のトレイルで優勝するには少なくとも2時間15分を切る走力がないと厳しい。そこに加えてトレイルでの強さをもう何段階も上げていかないといけないと思っています」

　UTMBというのは、ウルトラトレイル・デュ・モンブランという欧州の最高峰のモンブランを取り巻くフランス、スイス、イタリアの山岳地帯、169.4kmを走る世界最高のトレイルレースである。

　だが、そこに至るまでには実力を上げつつ、越えるべき山がいくつかある。

「レースでいえばまずは国内のハセツネCUPで勝つことです。海外レースにも出て、UTMBシリーズのCCC （累積標高差約6100m、総距離約100kmのレース）を走って優勝すること。そして、日本人トップの上田瑠偉さんを超えることです。瑠偉さんは、圧倒的に強い。瑠偉さんは海外でのレースが中心なので、まだ一緒に走ったことがないんですが、来年は世界のどこかで一緒に走れる機会があるはず。そこで瑠偉さんに挑戦したいですね」

©Nanae Suzuki

達成感に満ちてしまうとこれ以上伸びない

　5年後に世界一を目指すという田村に、神野はエールを送る。

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