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「今思えば、箱根に対して本気でやれていなかった」神野大地のYouTube動画編集からトレイルランナーに…青学大卒・田村健人が再び走り始めた理由 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byNanae Suzuki

posted2023/06/04 11:01

「今思えば、箱根に対して本気でやれていなかった」神野大地のYouTube動画編集からトレイルランナーに…青学大卒・田村健人が再び走り始めた理由<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

日本で開催されたトレイルランの国際大会にも優勝し、世界大会の優勝も目指す田村健人。青学大の先輩でもある神野から受けたアドバイスとは…?

「タムケンは、大学時代それほど褒められることってなかったと思うんです。でも、優勝してみんなにすごいと言われて今はちょっとフワフワしている。そこで達成感に満ちてしまうとこれ以上伸びない。5年後に世界一を目指すには、まず上田瑠偉君に勝たないといけない。それは相当に大変なことで、彼に勝つには3段階ぐらい上げていかないといけない。また、注目されればプレッシャーも出てきますし、その中で結果を出すのは難しい。タムケンがそこを理解して、自分を律して厳しくやっていけるか、今後が楽しみです」

 青学時代から仲が良い後輩だけに、成長してほしいという思いが強い。だからこそあえて厳しい言葉を今後も伝えていくという。

トレイルランナーが職業として成り立つように

 田村は、個人の結果を追求していくのと同時に、トレイルの業界を少しでも変えていきたいという思いがある。トレイルのレースは、賞金がない。世界のUTMBでも優勝賞金は30万円程度だ。マラソンで日本記録を出した設楽悠太や大迫傑は1億円を獲得したが、トレイルランナーは険しい山道にトラックを刻み続けた先に大金や五輪が待っているわけではない。

「トレイルは、競技人口やレースの数は増えているようですが、スポーツとしては十分に認知されていない。マラソンのようにレースに勝てば賞金が出るとかがなくて、競技として走っているプロが少ないんです。たくさんの賞金が出るとか、夢がある競技にしていかないと野球とかサッカーのように、若い人たちが『目指そう』とはならない。僕はトレイルの楽しさを広めたいという気持ちもありますが、競技性の部分にも注目してもらいたい。まずは僕が自信を持って職業は「プロトレイルランナー」です、と言えるように覚悟を持って取り組んでいきます」

トレイル界の「ニューヒーロー」

 日本ではトレイルを走る人が増えている。走る人が増えればトレイルの環境を整える人の苦労や仕事も増すが、競技面の充実にも取り組んでいかないとスポーツのジャンルとしてはマイナーなままで終わってしまう。競技大会で高額の賞金が出て、夢や華がある競技になればさらに注目され、そこを目指す人が増えていくかもしれない。

「トレイル界には、パイオニアもレジェンドもすでにいます。僕は『ニューヒーロー』になれるように頑張ります」

 完全無敵というより親しみやすく、応援したくなるようなキャラクターの“タムケン”ならトレイル業界やトレイルのレースの世界で新しいトラックを刻み、「ニューヒーロー」になれるかもしれない。

 <「青学時代」編もあわせてお読みください>

#1から読む
箱根駅伝を走れず引退した青学大ランナーは、なぜ“脱サラ”してトレイルランナーになったのか?「神野(大地)さんから話を聞いて1週間で会社をやめました」

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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