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バットを切断される嫌がらせを“無視”…ベーブ・ルース「伝説の投球」から2年、なぜ野手で起用されたのか? 知られざる「戦争の事情」
text by
AKI猪瀬Aki Inose
photograph byKazuaki Nishiyama
posted2023/05/14 11:02
2001年撮影のフェンウェイパーク(ボストン)。1916年8月、この球場でベーブ・ルースの「伝説の投球」が生まれた
元祖「二刀流起用」はなぜ生まれたか
特例を受けたとはいえ、選手たちは軍への入隊を決め次々とチームを去り、各チームは戦力を整えるのに必死だった。この年からレッドソックスの監督に就任した、エド・バーローは、スプリングトレーニングの期間中に戦力低下を実感。その頃、ルースは4、5日に一度しかプレーできない投手に不満を持っていた。そして、1919年にチームのキャプテンに就任することになる名外野手ハリー・フーパーは、この時期に新監督のバーローに「明らかに選手が足りない。投げない試合ではルースを野手として起用するべきだ」と進言していた。
フーパーの助言を受けたバーローは、オープン戦でルースを外野手や一塁手で起用した。しかし、チームの左腕エースに成長したルースを打者として起用することにリスクを感じていたバーローは、レギュラーシーズンでは投手専任でルースを起用することを決めた。
1918年4月15日、本拠地フェンウェイ・パークで行なわれたフィラデルフィア・アスレチックスとのシーズン開幕戦。9番投手で開幕投手を務めたルースは、9回1失点で完投勝利を記録。打者では2打点の活躍を見せた。
4月19日、本拠地でのヤンキース戦。ダブルヘッダーの2試合目に9番投手で出場。13安打を打たれ5失点を記録したが、味方の大量点に守られて完投で2勝目を手にした。
4月30日、本拠地でのワシントン・セネターズ戦。9番投手で出場し、投げては9回1失点で3勝目、打っては2打数1安打を記録する。
4月の成績は、投手で4先発、3勝1敗、防御率2・31。打者としては代打を含む6試合で打率4割1分7厘、0本塁打、3打点を記録した。
5月4日、敵地ポロ・グラウンズでのヤンキース戦。9番投手で出場し、8回5失点でシーズン2敗目を記録したが、7回表、相手先発アレン・ラッセルから右翼スタンドに突き刺さるシーズン第1号の2ラン本塁打を記録した。この日の本塁打を見た監督のバーローは、ルースを野手として起用することを決断した。
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