炎の一筆入魂BACK NUMBER
合言葉は「TIJ」 日本式をポジティブに受け入れ、3連覇と似た雰囲気を醸し出すカープ外国人選手の存在感
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byKYODO
posted2023/05/08 11:01
今身は中継ぎとして重要な場面で起用されているターリー。5月8日時点で防御率1.46と結果を残している
これまで歴代の広島監督は春季キャンプ中、沖縄のステーキ店で外国人選手と食事会を開くことが恒例になっていた。新井監督はその食事会を2度設けた。恒例の沖縄を前に、1次キャンプ地の宮崎県日南市でも彼らと膝をつき合わせたのだ。
これまでコロナウイルス感染拡大によって中止になることはあっても、複数回行われることはなかった。球団の通例にとらわれず、より良くなる選択肢を探る新井監督らしい行動力といえる。
日本球界に来る外国人選手の多くは、異国の地での不安だけでなく、米国でプレーしてきた自信とプライドも背負って来ている。過去にはコミュニケーションのズレから、不満をあらわにした選手もいた。意見の食い違いによって生じる溝はそう簡単には埋まらない。補強選手を最大限に生かすのも現場の役割だと、新井監督は分かっている。
メデイアを通して送る選手へのメッセージ
積極的にコミュニケーションを取るだけでない。今はスマートフォンで日本語記事も英語に変換して読める時代。ガラケーの指揮官がそれを知っているかは分からないが、メディアを通して彼らに対する信頼の言葉を発信している印象が強い。
「アンディは先発。彼自身、スターターとして意欲を見せている」
春季キャンプ序盤、ドリュー・アンダーソンの中継ぎへの配置転換の可能性を問う報道陣に対して、きっぱりと明言した。150キロ超の力強い真っすぐからも、中継ぎとしての魅力は感じられた。だが、本人の意思を尊重したのだ。開幕までの実戦では他のローテ投手と比べると見劣りする内容も、先発6番手入り。新井監督は情で動いたのでなく、長いシーズンを見通した方策だったのではないかと推察する。
キャンプ終盤には、WBC日本代表としてチームを離れていた抑えの栗林良吏の代役候補に、ただ1人名前を挙げたのがニック・ターリーだった。
「ニックの可能性が一番高い。(理由は)球の強さかな」
こちらは、はっきりと明言したわけではない。のちに「決定ではない」とも言っている。ただ、来日1年目の昨季は45試合登板も、明確な役割は与えられなかった。勝ちパターン投手ではなかった左腕からすると、メディアを通してでも信頼が熱いほど伝わっていた。