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《独占告白》香川真司34歳が明かすJリーグ復帰の決断と孤独「本当にお前はこれでいいのか…」「岡ちゃんはこの4年間、一番話をした人」
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byJ.LEAGUE
posted2023/04/27 11:00
12年ぶりにセレッソ大阪に復帰した香川真司(34歳)が、その胸の内を明かした
サッカーにはサイクルがあって、その時々のトレンドはある。それでも、ベースとなるものは普遍だと思っている。今はサッカーを複雑に考えすぎる傾向があるけど、こういう時代だからこそシンプルなマインドで考えなきゃいけないと思うし、サッカーはシンプルでいい。
例えば今季のプレミアで首位を走るアルテタのアーセナルもシンプルで、無駄なことを考えていない。今のアーセナルを見ていると、昔のドルトムントに重なるものがある。攻守の切り替えがはやく、パスを繋いで人とボールが動いていく。若くて勢いのある選手たちが青年監督の下でひとつになって上がっていく――そんな感じもよく似ているなと。
昔のドルトムントも、ボールを失ったら迷わずみんなで奪いにいった。それが楽しくて仕方なかった。あれほど守備のプレスを楽しんだのは後にも先にもあのときだけだった。「誰かボールを失え、プレスしたいから」とボールロストを願ってすらいた。ボールを取られた方が逆にチャンスだったし、前からプレスをかけて3秒後にはマイボールになって、バランスを崩した相手を一気に攻める。あの距離感、切り替えの速さ、共通意識は抜群だった。
満員のシグナル・イドゥナ・パルクの雰囲気はいまも忘れられない。ホームを感じさせてくれたし、あの声援が僕たちの背中を押してくれた。ドルトムントでリーグとカップをとれたことは自分にとっても大きな誇り。リーグ戦で優勝した喜びはもちろんだけど、個人的にはトゥヘル監督の時のカップ戦優勝の喜びの方が強い。あの時の優勝はすごく重くて、嬉しかった。あのシーズン、本当に苦労したからこそ、得た喜びは格別だった。1、2年目はクロップ監督の下、みんな怖いもの知らずで勢いで行った。その後、2年間過ごしたマンUで苦労して、いろんな経験をしてドルトムントに帰った。前半戦は最下位。ファンには「香川はどうなっているんだ」、「あの時の優勝の立役者がどうした」と言われて。そういう苦労をした末の優勝は、格別だった。