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千賀滉大“1メートル以上落ちる”魔球はなぜ生まれた? 体調悪化→二軍落ちの10年前…「投げたらストン」お化けフォークの“発明秘話”
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2023/04/21 11:00
千賀滉大“1メートル以上落ちる”魔球はなぜ生まれたのか? ホークス記者が“お化けフォークの秘密”を明かした
「フォークを投げたかったけど、僕はあまり手が大きくないので。だからスプリットです。だけど、まるで落ちなかった。ほとんどチェンジアップでした(笑)」
育成ドラフトでプロ入りし、2年目には支配下登録を勝ちとった。最初にもらった2桁番号は「21」だったが、その頃の千賀を思い返してもお化けフォークのイメージは殆どない。速いストレートと鋭いスライダーが武器の投手、という印象だった。
体調を崩して二軍行き…“発明秘話”
お化けフォークが生まれたのはその翌年、プロ3年目の2013年春のことだ。
「あの年は中継ぎで開幕一軍を争っていました。ならば落ちる球が必要。だけど、僕のフォークではまるで使い物にならなかった」
困り果てているところに、弱り目に祟り目。オープン戦中に体調を崩して二軍行きを命じられたのだ。
「2、3日キャッチボールもしなかったんです。そうしたら自分のフォームを忘れてしまって(笑)。色々試しているうちに気づいた。簡単に言えば、体を開かずに三塁側を向いたまま投げたら、ボールがストンと落ちたんです。背中で壁を作って、体が開かないように意識して投げたら、また落ちた。それがハマってくれた。嬉しい誤算だったんです」
壁を作る――それをヒントに進化を続けた。
千賀は一般的なフォークボールと違う握り方をする。通常、ボールを挟む人差し指と中指は縫い目にかけないのだが、千賀は人差し指を縫い目にかける。一体なぜなのか。
「イメージですけど、フォークがスライダー回転しないためにボールに『壁』を作りたかったからです」
右投手の場合、腕は体の右側から左側へ振り下ろされる。その軌道で腕を振れば、ボールはスライダー回転してしまうと考えた。そうなるとボールは落ちないためそれを防ぐべく、ボールの左側に人差し指で壁を作る。
それがお化けフォークの秘密だった。