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先発・千賀滉大は5回に急きょブルペンへ…3連勝を阻んだ“メジャーの洗礼”、ニコリともせず口にした「こういう失敗をしないように…」
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byGetty Images
posted2023/04/20 11:01
4月14日、あと1アウトで降板しデビューから「3連勝」とはならなかった千賀。その言葉と表情からは揺るがぬ覚悟が感じ取れた
4月2日。敵地マイアミでのデビュー戦を白星で飾った際、「ほっとした」と本音を漏らした。とはいえ、慢心とは無縁だった。思い焦がれたメジャーの初マウンドでは、高揚したあまり、冷静さを欠く、そんな自らの内面に少しずつ気付いていた。立ち上がりの初回、連続長短打で1点を失い、さらに連続四球で無死満塁のピンチを招いた。だが、日本で通算87勝を挙げた千賀は、塁上を埋めた走者を確認すると、チームの勝敗を背負っている自分の立場に立ち返り、ふと我にかえった。
「本当に何年も待ったこと。体がすごくヒートしているのが分かった。ぐちゃぐちゃなフォームで投げていました」
個人的な感傷に浸ることなく、自らの心理状態を客観視し、スイッチを入れ直した。
「制球ではなく、心の問題。このままだとストライクが入らないし、試合を壊すだけ」
足がゴーストだった
試合勘を取り戻した後は、5番以下を連続三振、右飛に仕留め、最少失点で切り抜けた。
「初回は気持ちがアップアップするようなマウンドだった。足がゴーストだった。ピンチを迎えて、逆に冷静になる感じでした」
その後は、本来の気迫を出すプレートさばきで、すべて代名詞の「お化けフォーク」を決め球に8奪三振。日本で通算78勝を挙げた経験値は、心の昂ぶりを制御する術も持ち合わせていた。
「初対戦なのでどう考えても投手が有利。データがそろう中で抑えるのが本当のメジャーリーガー。安定感を見せられるようにしたい」
試合後、報道陣の問いに答える言葉は、自らに言い聞かせるようだった。
お化けフォーク…だけじゃない、巧みな配球
連勝を飾った本拠地シティーフィールドでの2戦目は、クレバーな千賀の真骨頂だった。相手は、わずか6日前の初登板で対戦した同地区のマーリンズ。同じパターンで結果を残せるレベルでないことは、十分に承知していた。