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「感じねえんだよ、気持ちをよ!」鈴木優磨が鹿島サポーターの罵声を浴びて…“ホームで5失点惨敗”カメラマンが目にした名門の苦悩 

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原壮史

原壮史Masashi Hara

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photograph byMasashi Hara

posted2023/04/19 17:01

「感じねえんだよ、気持ちをよ!」鈴木優磨が鹿島サポーターの罵声を浴びて…“ホームで5失点惨敗”カメラマンが目にした名門の苦悩<Number Web> photograph by Masashi Hara

首位のヴィッセル神戸にホームで1-5と大敗し、サポーターの罵声を浴びた鈴木優磨。鹿島アントラーズは8節を終えて15位と低迷している

 そして試合終了と共に、限界を迎えて倒れ込む。あるいは悔しさを噛みしめるかのように、しゃがみ込んでしまうこともある。この日はその両方だった。芝の上に倒れ込んだ鈴木は神戸のマテウス・トゥーレルによって引き起こされたが、今度はその場にしゃがみ込んだ。昌子源に迎えられて、ようやく整列のために歩いていったが、26歳のゲームキャプテンは全てを1人で背負おうとしているようにも見えた。

 昨年、ベルギーから鹿島に戻ってきた鈴木は「このクラブに一番タイトルをもたらしてきた人の背番号」と小笠原満男がつけていた40番を選んだ。小学生のころからアントラーズの選手として戦ってきた彼は、復帰理由を「このクラブを優勝させるため」と語った。2023年には、新たに導入されたキャプテン4人制の一角を担うようになった。開幕節の京都サンガ戦で相手サポーターを煽ってイエローカードを受けたように、その言動で悪目立ちすることもあるが、「鹿島を勝たせたい」「強い鹿島を見せたい」という気持ちをストレートに発露させているという一面において、彼を超える選手はいない。

徐々に失われていった“鹿島らしさ”

 ここまで手にした主要タイトルは20冠。長らく“常勝軍団”と呼ばれてきた鹿島アントラーズだが、2018年のACLを最後に栄冠から遠ざかっている。

 神戸戦のように、「勝たなければいけない試合」を落とす姿が珍しくなくなってきているのは事実だ。かつての鹿島は、ここぞという試合で無類の強さを誇っていた。タイトルを勝ち取れていないこと以上に、長く維持してきた“鹿島らしさ”が失われていることに危機感を持つサポーターは少なくない。

 2020年のACLプレーオフで、ホームでの一発勝負にもかかわらずメルボルン・ビクトリーに0-1で敗れた当時は「まさか鹿島が……」という衝撃があった。しかし2022年には、もはや驚くべき光景ではなくなっていたのかもしれない。同年4月10日の第8節、横浜F・マリノスとの上位争いで0-3の完敗。5月25日の第15節サガン鳥栖戦では0-3から4-3と一時逆転しながらも、試合終了間際の失点で4-4の引き分け。シーズン途中まで首位争いに名を連ねてはいたものの、クラブの文化でもあった勝負強さ、悪い流れを断って勝ち切る無形の強さは見られなくなってきていた。

 そして今シーズンも、広島戦、柏戦、神戸戦と3試合続けて“鹿島らしくない姿”を見せてしまった。クラブとして転換期を迎えているとはいえ、第8節を終えた時点で15位という順位にサポーターが納得できるわけもない。冒頭の光景は、そんな状況で生まれたものだった。

【次ページ】 巻き返すチャンスは、まだある

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