Number的、ウマ娘の見方BACK NUMBER
「ウマ娘になぜ松坂大輔の名言が?」話題のアニメ新シリーズ『ROAD TO THE TOP』第1話を読み解く「アドマイヤベガのおにぎりが1個だった理由は…」
text by
屋城敦Atsushi Yashiro
photograph byCygames, Inc.
posted2023/04/20 11:00
弥生賞の後にナリタトップロードと言葉を交わすアドマイヤベガ(左)。作中の一挙手一投足にファンがグッとくる史実が詰め込まれている
オペラオー回想シーンの芝/ダートにも注目
後半パートは3人の主役のもうひとり、テイエムオペラオーにスポットが当てられる。冒頭は新馬戦後の左後肢骨折から復帰したばかりの時期を元にしているようで、左足のテーピングを外して具合を確かめる姿が描かれている。ともにいるのは、後のライバルだがクラシック戦線には縁がなかった同世代のメイショウドトウである。その後の連勝を飾るシーンは、3戦目の未勝利戦、4戦目のゆきやなぎ賞と、それぞれのダート、芝コースもきちんと反映されているところに注目したい。
史実でも年明けの復帰から4戦もこなして皐月賞に臨むという厳しいローテーションだったが、作中でもかなりキツそうな表情を見せる。それでもつねに明るく、前向きに“オペラ劇場”を演じるテイエムオペラオー。この性格はモデル馬のそれというよりは、主戦だった和田竜二騎手の明るいキャラクターが大きく影響していると言われている。
まさかの松坂大輔の名言が登場
場面は移ってトレセン学園の食堂に。史実でも大食いで知られたオグリキャップは自身の目線より高く積まれたごちそうを前にしている……。とんでもない健啖家ぶりに戸惑いつつも、彼女に話し掛けるテイエムオペラオー。その会話ではオグリキャップの毎日杯への思い入れの深さが語られる。
史実でも毎日杯を勝利してクラシックへの出走を狙った経緯があったからだろう、同じく毎日杯を勝利した“後輩”に「君は出るべきだ」と力強く後押ししていた。
そしてテイエムオペラオーは「ありがとうオグリさん。その言葉でボクの自信が確信に変わったよ」と返すのだが、これは同じ1999年の5月16日にプロ野球西武ライオンズの新人、松坂大輔がイチローから空振り三振を取った試合後の有名なひと言が元ネタであろう。
「勝つのはこっちやろ」「行かないか行けないか」
そしていよいよ本番、皐月賞を迎える。雨の天候や、1番人気アドマイヤベガ、2番人気ナリタトップロードというのも史実通り。さらに出走直前には、ナリタトップロードとテイエムオペラオーが火花を散らすシーンが描かれる。幼なじみである渡辺、和田の両騎手が「勝つのはこっちやろ」とバチバチやりあったというエピソードが、ウマ娘の姿を借りて再現されているのだ。