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「上半身がパンチの筋肉に…」那須川天心は“プロボクサー”に生まれ変わったのか? 24歳の変わらない本質「僕の人生は格闘技なので」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph bySusumu Nagao
posted2023/04/12 11:09
4月8日、プロボクサーとしてのデビュー戦を3-0の判定勝利で飾った那須川天心。日本バンタム級2位の与那覇勇気を持ち前のスピードで翻弄した
9日に行われた一夜明け会見で身体の変化について問うと、天心は答えた。
「上半身がパンチの筋肉になってきたなと。キックのときには足がメチャクチャ太かったので、それがちょっとスマートになったかなと思います。フィジカルトレーニング? 特別やっていません。ボクシングしかしていない」
ボクシングでも“打たせずに打つ”本質は変わらず
一般に「キックボクシング」と聞くと、一部のワイルドな選手の闘い方である激しく打ち合う攻防をイメージする向きも少なくないと思われるが、天心の出現によってその流れは大きく変わりつつある。天心や彼のライバルだった志朗のように、“打たせずに打つ”スタイルを選択する選手も増えてきたのだ。試合の流れは美しく洗練され、選手寿命も長くなる。キックからボクシングへと舞台は変わっても、闘いの本質は変わっていなかったのだ。
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天心はファイターとしてのポリシーを強調するように、こう口にした。
「キックボクサー時代も僕はもらわずに当てていた。そのへんは変わっていない」
それだけではない。天心はキック時代の入場テーマ曲である矢沢永吉の『止まらないHa~Ha』をかけ、会場の空気を一層熱くした。アントニオ猪木氏の『炎のファイター ~INOKI BOM-BA-YE~』ではないが、少なくともファンはそのイントロが耳に入っただけで気持ちのスイッチが入る。ボクシングのビッグマッチで『止まらないHa~Ha』が流れ、天心が入場してくる――それだけで鳥肌ものなのだ。試合直後のインタビューで入場テーマ曲について問われると、天心は「矢沢さんの曲じゃないと俺じゃないでしょう」と破顔した。
以前から天心は子どもや女性のファンが多いことで知られている。この日もその傾向は変わらず、試合中には観客席からまだ声変わりしていない「頑張れ、天心!」といった幼い声がこだました。ボクシングの大会場でこれだけ子どもの声が聴こえたのは、いつ以来なのだろうか。ボクサー天心がもたらす“経済効果”として、ボクシング界は新たな観客層の開拓を求めていたが、結果的にそれはデビュー戦から実現したことになる。