「上半身がパンチの筋肉に…」那須川天心は“プロボクサー”に生まれ変わったのか？ 24歳の変わらない本質「僕の人生は格闘技なので」

　やはりというべきか、主役は神童だった。

　4月8日、有明アリーナで行われた『Prime Video Presents Live Boxing』。ふたつの世界戦を含む豪華なカードが目白押しだったが、世間の関心は那須川天心のプロボクシング転向第1戦に集中していた。

　現役の日本ランカーを相手にした、受験生は天心ひとりという異例のプロテスト。決戦1週間前に後楽園ホールの興行の中で行なわれた公開スパーリング。さらにNHKが特集を組むなど、試合前から天心に関する報道は過熱するばかり。デビュー戦の翌日になると、スポーツ紙はいずれもカラーで天心の初陣を大きく扱った。キックボクシングからボクシングへの転向組で、かつてこれほど騒がれた例はない。

4月8日、有明アリーナ。プロボクシングデビュー戦のリングに上がった那須川天心　©Takuya Sugiyama

すべての写真を見る（41枚）

キック時代から一変した「ボクサー仕様」の肉体

　全体を通しても“神”が舞い降りた興行だった。現時点で「年間ベストバウト」という呼び声もある寺地拳四朗vs.アンソニー・オラスクアガは、まさに激闘と呼ぶに相応しい世界戦だった。試合中に相手のヒジで流血を余儀なくされた井上拓真も、集中力を切らすことなく兄・尚弥が返上したベルトのひとつWBA世界バンタム級王座を井上家に奪還した。21歳のWBOアジアパシフィックウェルター級王者・佐々木尽は、挑戦者の小原佳太に先制のダウンを奪われながらも、持ち前の剛腕で立て続けにダウンを奪い返して王座防衛に成功した。

　そうした中でも、天心は一際異彩を放っていた。キックボクシングで42戦全勝（28KO）という不敗神話を打ち立てた24歳のレジェンドは、ボクシングでも連勝街道を突き進むのか。それとも……。世間の目はその一点に集中していたといっていい。より噛み砕いていえば、多くの人が「キックボクサーがボクシングに挑戦する」という異種格闘技的なフィルターを通して見ていたのではないだろうか。

　しかしプロテストを受けたときの天心の上半身を見れば、ボクシングへの挑戦が腰かけでないことは明白だった。キックをやっていた頃と比べると、体つきが明らかに変わっていたからだ。

【次ページ】　ボクシングでも“打たせずに打つ”本質は変わらず