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「育成ドラフト4位の23歳が開幕戦で史上初快挙」って何? オリ茶野篤政にWBC帰りの宇田川優希、“ポスト千賀”藤井皓哉…叩き上げ組がアツい
posted2023/04/04 11:03
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo News
2023年の開幕戦、セ・パ両リーグのスターティングメンバ―計114人のうち、昨年も開幕スタメンに名を連ねていたのは49人だった。
最も多かったのはヤクルト(青木宣親、山田哲人、村上宗隆、長岡秀樹、J.オスナ、小川泰弘)の6人、最も少なかったのはオリックス(宗佑磨、杉本裕太郎)、ロッテ(中村奨吾、藤岡裕大)の2人である。
オリックスが昨季からスタメンを大きく変更した中で
前年の優勝チームはあまりレギュラーを動かさないのが通例で、セの優勝チームヤクルトはそうなっているが、パの優勝チームで日本一にもなったオリックスは、スタメンの顔ぶれを大きく変えてきた。
オリックスは絶対的な主軸打者の吉田正尚がレッドソックスに移籍、また森友哉が西武からFA移籍、そしてWBCで活躍したエースの山本由伸が調整中ということもあったが、それにしても思い切ったメンバーの刷新をしたものだ。
周囲を驚かせたのは、開幕投手にこれまで一軍での登板経験のない山下舜平大を抜擢したこと。2021年、福岡大大濠高からドラフト1位で入団。昨年はウエスタン・リーグで8試合2勝2敗35.1回、防御率3.31、今春のオープン戦では4試合2勝0敗15.1回、防御率2.35を記録。確かに順調な成績だが、一度も一軍のマウンドに立っていない投手を敵地ベルーナドームの開幕戦に起用した中嶋聡監督の胆力には恐れ入る。山下はその期待に応えて5.1回自責点1の好投を見せた。
それ以上に驚いたのは、開幕戦に8番右翼で茶野篤政を起用したことだ。
茶野は中京高から名古屋商科大を経て昨年は独立リーグ徳島インディゴソックスでプレーし、打率.316で首位打者を獲得した。筆者は9月末に徳島で茶野に話を聞いたが、彼は冒頭「取材は何分ですか?」と聞いてきた。取材の時間でさえも惜しく、もっと練習したい、集中したいという前のめりな気持ちがにじみ出ていた。
茶野は「徳島に来てからNPBを意識した」と語り「当然、育成指名でもOKです。何とかしてNPB球団に行きたい。今年ダメだったらどうするかはまだ考えていません。とにかく、NPB球団に行くことだけを考えて集中したいと思います」と言い切った。
育成ドラフト4位で時間がかかるかと思いきや
独立リーグからNPBにドラフト指名されるには、茶野のような強い気持ちが必要だ。
昨年のドラフトでは、徳島から日隈モンテル(西武)、中山晶量(日本ハム)、そして茶野が指名された。いずれも育成ドラフトだったが、茶野の指名順は3人の中で一番後であり(4位)、それほど期待感が高かったわけではない。175cmと小柄で、訥々と話す選手ではあった。