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「育成ドラフト4位の23歳が開幕戦で史上初快挙」って何? オリ茶野篤政にWBC帰りの宇田川優希、“ポスト千賀”藤井皓哉…叩き上げ組がアツい
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2023/04/04 11:03
プロ初安打をマークしたオリックス茶野篤政。彼のような育成ドラフト出身の選手がNPBをアツくする
そもそも茶野は大学時代は二塁手で、徳島に来てから外野にコンバートされた。外野手として育成指名されたが、プロの外野守備技術を身につけるにはしばらく時間がかかると思われた。しかし茶野はオープン戦で10試合22打数6安打1二塁打2打点、打率.273とプロで通用するところを見せ、外野守備も無難にこなした。
3月6日、京セラドームで行われたWBC韓国代表とオリックスの強化試合では茶野は試合途中から出場した。外野での機敏な動きが目立っていた。このときはまだ背番号は育成選手の「033」だったが、3月24日に支配下登録され背番号は「61」に。そして開幕スタメンを手にしたのだ。
茶野が成し遂げた“開幕戦史上初”の出来事とは
茶野は3回に西武のエース髙橋光成の初球を打って三塁内野安打。50m6秒フラットの俊足が活きた。さらに捕手・柘植世那の送球をかいくぐって初盗塁も記録した。開幕3試合にすべてスタメン出場し、8打数2安打1盗塁1盗塁死1犠打、打率.250。守備でも刺殺を6つ記録した。
前年育成枠で入団した選手が、開幕スタメンになるのは史上初のことだ。
優勝チームであるオリックスの外野は、層が厚い。主軸の杉本裕太郎、中川圭太、リードオフマンの福田周平、若手の来田涼斗、池田陵真、足が売りの佐野皓大と競争相手は強力だ。
茶野がこのまますんなり左翼のレギュラーになるわけでない、厳しいプロの世界だが――こういった選手のシンデレラストーリーに期待したい。
独立リーグ出身で注目なのはソフトバンク藤井
もう一つ、独立リーグ出身選手で大きな挑戦をしたのが、ソフトバンクの藤井皓哉である。
藤井はおかやま山陽高からドラフト4位で広島に入ったが、1勝どまり。2020年オフに戦力外となり独立リーグ高知ファイティングドックスに入団。ここで11勝3敗、防御率1.12という抜群の成績を挙げオフにソフトバンクに育成契約で入団。昨年開幕前に支配下登録され、一軍昇格。又吉克樹が負傷で戦線離脱する中でセットアッパーとして「勝利の方程式」を担い、55試合5勝1敗3セーブ22ホールド防御率1.12を記録。「ソフトバンクが優勝すればMVP候補」とまで評価された。
2023年は先発に転向、オープン戦では3月11日から先発投手として3試合に登板。2勝1敗、16回12被安打3与四球23奪三振、防御率2.81と安定感のある投球を見せ、先発テストに合格した。
そして開幕第2戦の4月1日のロッテ戦に先発し、5回1死まで四球をひとつ出しただけの無安打投球を見せて、7回92球2被安打2与四球9奪三振、自責点0で、見事な先発初勝利を飾った。
救援から先発への転向は、それほど珍しくはない。最近では楽天のクローザー松井裕樹が2020年に先発転向を志願したが、救援に再転向している。今季はソフトバンクの同僚・森唯斗、西武の平良海馬が先発転向を目指した。平良は開幕3試合目に先発し、7回自責点1と好投したが勝ち星つかず。そんな中で藤井が先発勝利一番乗りを果たした。「すごく緊張したが、一喜一憂しないように心掛けた」と正直なコメントを漏らしている。