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大谷翔平の筋肉を触って「朗希、まだまだやな」夢のような“二刀流生活”を終えた吉井監督、休む暇もなくロッテ帰還「ワクワクするチームつくる」
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/03/27 17:01
佐々木朗希を1年目から見守ってきたロッテ吉井理人監督。侍ジャパンでは投手コーチとして、怪物の世界デビューを見届けた
吉井監督にとって印象的だった試合は、佐々木が大会2度目の先発をしたフロリダでの準決勝メキシコ戦。普段はクールな令和の怪物が、ベンチで感情を露わにしている姿を見た。
「3ランを打たれた時。すごく悔しそうな表情をしていた。3ランで同点に追いついた時には本人は認めないとは思うけど、ホッとして嬉しくて泣いているようにすら見えた。そしてサヨナラした時も感動をして感情を爆発させていた。今までになかった感情が出ていた。一発勝負の国際大会。ああいう経験が彼の財産になる。向上心が高くなると思う」
若者が大会を通じて成長し、さらにどんどん大きくなっているのを感じ取った。そしてダルビッシュ、大谷という超一流選手を見て、直に触れ合い刺激を受け、色々な事を吸収しているのが嬉しかった。
大谷の肩を触って「朗希、まだまだやな」
大谷が初めて侍ジャパンに合流した中日ドラゴンズとの強化試合の試合前練習の事だ。外野付近で佐々木、大谷と3人で言葉を交わした。吉井監督は大谷の肩を触り、そのあと、佐々木の肩を触った。
「(佐々木)朗希、まだまだやな。全然、違うぞ」
あえて、筋肉の違いを口にした。佐々木は刺激を受けたような目をした。その強気な表情が頼もしくあり、さらなる未来を感じた瞬間でもあった。
世界一を決めた時、2人でメダルを首からぶら下げながらマウンド上で写真を撮った。充実した表情で笑顔を見せた佐々木。そして、このマウンドに、才能あふれる若者を送り出すことを夢見た吉井監督。2人だけの空間。幸せな時間となった。
優勝後の記者会見では「ピッチャーのメンバーを決めた時から優勝を確信していた」と語った。その言葉は別に会見用に作った飾りものの言葉ではない。
「本当にそう思っていた。ピッチングメンバーが決まった時に8割ぐらい仕事は終わったと思った。勝てる、優勝すると思った」と吉井監督。それほどのメンバーがそろった。自身が完璧と思える頼もしき最強投手陣だった。
ただ、幸せに浸るのは一瞬だけにした。