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野球クロスロードBACK NUMBER
「だからみんな桐蔭を選ぶ」大阪桐蔭OB・平田良介が明かす“西谷監督の素顔”「ナゾの言葉『どぅい』を持ってるんです」…その意味とは
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama/JIJI PRESS
posted2023/03/27 11:01
大阪桐蔭を率いる西谷浩一監督は、どんな言葉で平田良介に“魔法”をかけたのか。甲子園に5本のアーチをかけた平田が高校時代を振り返る
恩師が発する「謎の言葉」の意味
1年夏からベンチ入りし、秋からは不動の4番としてプロからも注目を浴びるようになっていた平田にとって、西谷との意思疎通は現状を知るバロメーターとなっていた。
平田が切り出す。
「西谷先生、謎の言葉を持ってるんです」
反射的に問うた。その言葉とは?
「『どぅい』です」
瞬時に疑問符が浮かぶ。確かに謎だ。
言葉の響きが「やりなさい」を意味する「Do it」と似ているが、違うらしい。
平田によると、語尾が上がっていれば「いいじゃないか!」「その調子だ」といった肯定的な意味合いらしく、声のトーンが落ちていれば「どうしたんだ?」「お前なにしてんねん」のような不機嫌さが窺えるというのだ。
「そこで西谷先生の気持ちを読み取るわけです。フリーバッティングで打ち終わってケージ出た時とか、西谷先生の声の上がり具合で『このままでいいんやな』って思えたり、『今の状態はダメなんやな』って自分で考えて練習できたんで。それはみんなに言ってましたし、僕としてもあれこれ言われるよりかはよかったです。今でも『どぅい』の本当の意味が分からないんですけどね(笑)」
西谷の「謎の言葉」によって魔法をかけられた平田は、大阪桐蔭ですくすくと育った。
70本ものホームランを量産し、高校生ドラフト1巡目で中日に入団。やがてチームの主力選手となり、ますます逞しくなっていった。
有名になったプロ野球選手が、自分たちが愛情を注がれたグラウンドを訪問する。
穏やかな笑みを浮かべながら教え子を迎え入れてくれた西谷に、平田が告げる。
「小学校の息子が野球をやってて、桐蔭に行きたがってるんですよ」
恩師の目が大きく開く。
「どぅい!」
平田の脳裏に憧憬の念が広がる。
「めっちゃ喜んでるやん」
心でひとりごち、ほっこりした。
<つづく>
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