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「だからみんな桐蔭を選ぶ」大阪桐蔭OB・平田良介が明かす“西谷監督の素顔”「ナゾの言葉『どぅい』を持ってるんです」…その意味とは
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama/JIJI PRESS
posted2023/03/27 11:01
大阪桐蔭を率いる西谷浩一監督は、どんな言葉で平田良介に“魔法”をかけたのか。甲子園に5本のアーチをかけた平田が高校時代を振り返る
「西谷先生は多分、子供が大好きなんですよ」
「今なんか特に『いい選手を集めてるから』とか言われるじゃないですか。まず、それができること自体がすごいことなんですよ。僕らの時代の桐蔭って、今みたいに有名じゃなかったと思うんです。西谷先生は、そんなところから頑張って選手を集めて、みんなの力を向上させてひとつのチームにまとめ上げる。それを毎年、毎年やってるんですよ!」
平田が語気を強めながら、大阪桐蔭の、西谷の尽力を力説する。
彼らは西谷の“尽力”の恩恵を授かり、だからこそ心から感謝する。平田いわく、「明らかに進路の道が開けたのは自分たちの1個上から」だという。
04年のセンバツに出場した主力だけで言えば、キャプテンの生島大輔が早稲田大。現在、大阪桐蔭でコーチの橋本翔太郎が日体大。センバツで東北のダルビッシュ有からホームランを打った中村桂司が中央大と、半数以上が関東の名門へとステージを上げた。
目標を「プロ1本」に絞って邁進し、他者の進路への関心が薄れてもおかしくない平田がここまで把握しているのは、西谷が選手に向ける愛情を目の当たりにしていたからだ。
「進路を選手と一緒に真剣に考えてくれるんですよ。レギュラーやベンチ入りだけじゃないですよ。メンバーから外れた選手に対しても同じように密にやり取りしてくれるんです。すごくないですか? だから、そういうことを知った中学生は、西谷先生を信じて桐蔭に来るんじゃないですかね」
西谷が発する熱量の源を、平田はこのように解釈している。
それは、高校野球の指導者、いや教育者たちにとって、求めたくても、実践したくても難しい素養でもあるはずだ。
「西谷先生は多分、子供が大好きなんですよ。本当に我が子のように選手と接しますからね。『本当に愛してくれてるんやな』って、みんなに伝わってるんです。そういうのが」
平田と入れ替わりで卒業した西岡がいたころまでは血気盛んだった西谷も、このころには「怒ることはめったになかった」という。それどころか、平田が言う「我が子と接するように」選手とのコミュニケーションを密に図り、常にモチベーションを高めてくれていたというのだ。