猛牛のささやきBACK NUMBER
吉田正尚「大谷はヤバイ、俺なんかリトルリーガーや」いやいや、何をおっしゃる…実はヤバイ“120億円の男”の仕事っぷり〈大谷と同じ8打点〉
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byReuters/AFLO
posted2023/03/14 11:06
チャンスの場面でしっかり仕事をこなす吉田正尚(29歳)。大谷翔平と並び、貴重な得点源として機能している
3月7日に京セラドーム大阪で行われたオリックスとの強化試合の前に、吉田は昨年までのチームメイトとひとときの再会を楽しんだ。青山学院大学時代の先輩で、オリックスでもクリーンナップを組んだ“ラオウ”こと杉本裕太郎は、その時に吉田と交わした会話をこう明かす。
「『大谷君どお?』って聞いたら、正尚が『もうヤバすぎて、俺なんかリトルリーガーや』と言ってました。僕たちがずっと『ヤバイ』って思っていた正尚でさえも、『ヤバイ』と言ってたんで、上には上がおるんやなと思いましたね」
オリックスで“マッチョマン”としての立ち位置を確立した吉田でも、大谷の打撃練習や体格差、6日に行われた阪神との強化試合で見せた2本のホームランに度肝を抜かれたことは想像できる。
“俺なんかリトルリーガーや”
吉田らしいユーモアだが、いやいやいや、何をおっしゃる。本番になれば吉田もメジャーリーガーの凄みを発揮した。打席の中で1球ごとに修正を重ねて確実にボールにコンタクトし、出塁率は.526、三振は0。何よりの魅力は勝負強さだ。昨シーズンの満塁での打率は.455だったが、韓国戦の逆転打で改めてその強さを証明。特にビハインドの場面や競り合いの展開で真価を発揮する。
メジャー1年目、WBC出場はリスクもある
1打席、一振りにかける集中力の高さは、このWBCにかける想いの強さを物語っている。
吉田は昨年12月に、ポスティングシステムを利用し、レッドソックスと5年9000万ドル(約122億円)という大型契約を結んだばかり。メジャー移籍1年目の日本人選手がWBCに出場するのは異例のことだ。だが、吉田にとっては当然の選択だった。
「WBCは、僕の小さい時からの憧れというか、一つの大きな目標だった。日の丸を背負ってかっこいいな、自分もそういう舞台に立ちたい、トップチームに入りたい、という想いは、ずっと今まで変わらずありました。当初の予定というか、WBCというのは自分の中で前からポイントの一つに置いていました」
今回の第5回WBCは当初2021年に開催される予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で延期され、今年の開催となった。吉田の中では、21年にWBCの舞台に立ち、その後メジャーへ、というイメージがあったようだ。だが結果的に2つの夢のタイミングがたまたま重なった。だからと言って、どちらかを諦めるという選択肢はなかった。
「メジャー移籍が決まっても、WBCへの想いというのは変わらなかった」