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大谷翔平(28歳)の“新世代ムードメーカーぶり”がスゴい…「自然体でさりげない」気遣いにヌートバーは感謝「ショウヘイが、いいね!って」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byスポニチ/アフロ
posted2023/03/09 17:04
3月7日、侍ジャパンvsオリックスのベンチにて談笑する大谷翔平とラーズ・ヌートバー
「いいね!」チームの雰囲気を良くしたパフォーマンス
代表合流後、初の実戦となった6日の阪神との強化試合では、ベンチで近くに座り、通訳を介さずに談笑する二人の姿があった。相手投手の球種や特徴を伝えあったり、プロ野球独自の応援スタイルやイニング間のイベントなど日本式の習慣を解説する場面も。そして3回、2死三塁の場面でヌートバーがスライダーに詰まりながらもセンター前へ運び、先制点を叩き出すと、塁上であのポーズが……。さらに2死一、二塁とチャンスを広げ、片膝をつきながらの3ランを放った大谷は、ダイヤモンドを一周しながら、あのポーズを繰り出した。
ヌートバーが秘話を明かす。
「ショウヘイと、チームセレブレーションみたいなことを何かやらないか、って話していたんだ。でも、エンゼルスには特にそういうのがないんだ、って。それで、カージナルスにはこれがあるよ、って話したらショウヘイが『いいね! 先頭バッターなんだし、ヒットを打って出塁したらぜひやってよ』って言ってくれたんだよ」
ペッパーミルで胡椒を引くようなポーズ。昨シーズン、ヌートバーがカージナルスで流行させた「ペッパーグラインダー」というパフォーマンスが、二人の会話をきっかけに侍ジャパンでもお披露目された瞬間だった。翌7日、オリックスとの強化試合では選手たちの間でもすっかり定着。ヌートバーは「楽しんでくれて嬉しいよ。みんなが出塁したときにやれるし、チームの仲間意識を高めるようなパフォーマンスと思っている」と嬉しそうに笑っていた。
「自然体でさりげない」大谷が見せるムードメーカーぶり
凱旋した日米のスーパースターも、今の代表チームの野手陣では15人のうち大谷より年上が9人、年下が6人と、年齢ではまだ中堅より若手に近い位置にいる。投手陣最年長である36歳のダルビッシュ有(パドレス)が見せるようなリーダーシップを発揮する立場にはおらず、大谷自身もそれを望んでいないだろう。ただし、投打におけるその実力はもはや次元の違うところにある。3歳年上の山川穂高(西武)が大谷の2本のホームランを目の当たりにして、「マジで野球辞めたいっス」と漏らしたように、練習中からその打撃を見せつけられたチームメートは一様にあっけに取られていた。
ヌートバーは言う。
「僕はファンの人たちと同じようなもの。ベンチの最前列で大谷を見られるのだから、僕はものすごくラッキーだよ。彼がどのように野球をしているか、そしてフィールド内外でどう振る舞っているのか、その姿を見ることができるのはアメージングだ」
同じメジャーリーガーであっても、日本代表のチームメートであってもそのプレーに心をときめかせ、圧倒的な実力に新鮮な驚きと感動をもらえる。大谷翔平は、侍ジャパンの中でそんな存在である。だからこそなお、他を寄せ付けないようなオーラを纏うことなく、自然体でさりげない大谷の振る舞いに選手たちは安心し、打ち解けることができるのだろう。