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「ダルビッシュや大谷の後に…どんなメンタルで投げるんや」23歳大勢の恩師ドキドキな心境「マウンドに立ったらチャンネル変える」
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byKYODO
posted2023/03/09 06:03
昨季セ・リーグ新人王を獲得した大勢(23歳)。侍ジャパンでは守護神候補として期待されている
「いやあ、もう見てられなかったですよ。こちらも心臓がバクバクしました。益田の試合は見ることはありますが、翁田(大勢)は正直、信用がなかったんですよ(苦笑)。最後は見ていられなかったです」
そこから大勢は恩師の心配をよそに、ルーキーとして史上初となる初登板から7試合連続セーブを挙げ、開幕11試合目にして球団新人最多セーブのタイ記録に並んだ。オールスターのファン投票では「抑え部門」で1位に選出されるなど、大勢の名は瞬く間に球界に広まっていった。
「今までとは違って、受けているキャッチャー、後ろで守っている野手もプロ。そこは心強いですよね。駆け上がっていく時はこんな感じなんですよ。益田もすぐにオールスターに選ばれましたけれど、こうなると一気にいくものです。良い勘違いをしていたら、段々それが現実になっていったように見えました」
プロスカウトが大勢に注目した試合
大勢こと翁田大勢の大学公式戦デビューは2年春の阪神大学野球リーグ戦。秋季リーグ5節目の関西外大戦では、8安打を許しながらも延長12回を10奪三振1失点で投げ切った。「下が緩いマウンドでしたけれど、力任せではなく変化球をうまく使ってゲームを作っていました」と、評価が一変した試合でもあった。
ドラフト戦線の話題に初めて上がったのは大学3年の春。阪神タイガース二軍との試合で2番手として登板し、4回を投げて3安打2失点の内容だったが、150キロ台のストレートを連発したことで視察したNPBスカウトの目を釘つけにした。
しかし、その後は新型コロナウイルス感染拡大によるリーグ戦中止や、ヒジの炎症などで実戦機会が激減。鈴木監督は「1シーズン投げられていないピッチャーだから、(信用が)なかなかできなくてね」と当時の苦しい心境を明かしている。
それでも4年時に復帰すると、魅力あるストレートや投げっぷりが評価されて、ドラフト1位指名を受けるまでの投手に駆け上がっていった。ドラフト会議当日のことを恩師はこう明かす。