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「WBCの盛り上がり? まったくない」米国記者が悲しむ現地の“リアルなWBC熱”…侍ジャパンの“練習配信”なんて「アメリカでは考えられない」
text by
阿部太郎Taro Abe
photograph byGetty Images
posted2023/03/07 17:08
大谷翔平の2打席連続弾に沸いた3月6日の京セラドーム大阪。WBC開幕前から日本が盛り上がるなか、米国記者に現地の“WBC熱”を聞いた
――たとえば、大谷翔平には保険がおりる。
そう。万が一怪我をしたら、保険会社がエンゼルスに大谷の給料を全額支払う。
――大谷に保険がおりて、カーショーにおりない理由は?
カーショーは毎年怪我をしている。リスクが高く、保険金を出さないといけない可能性が上がるため、保険会社が「ノー」を出した。ドジャースの場合、カーショーが怪我をして27億円を損したら、チームとして非常に難しい状況になる。もう一人ダメだったのが、ベネズエラ代表のミゲル・カブレラ(タイガース)だ。これはうちの新聞(ロサンゼルス・タイムス)が報道した。最初は保険会社がカバーしないと言って、出ない状態になっていた。だがタイガースが、仮に怪我をしてもチームが給料を全額払うようにしたようだ。保険はおりない。
MLB機構が運営するかぎりWBCは変わらない?
――WBCは、MLB機構が運営しているところに難しさがある。
サッカーのワールドカップはFIFAが運営している。例えば、PSGのようなクラブは本音ではリオネル・メッシを出したくないかもしれないが、出さなければいけないシステムになっている。やはり統括組織は別々でなければいけない。WBCは、大会を統括する側とチームが同じ組織。すべてMLBだ。彼らにとって重要なのは、どちらがよりお金を稼げるか。MLBのシーズンの方が利益は大きい。WBCとMLBのシーズン、どちらを優先するかと言ったら、シーズンを優先してしまう。
――WBCについて、当事者である選手の意識は変わっているように思うが。日本では「アメリカが本気になった」と報道されている。
本気というより、今回、野手のメンバーが揃ったのはマイク・トラウト(エンゼルス)の影響が大きいと思う。トラウトを最初にリクルートして、そこから彼が自らいろんな選手に「一緒に出よう」と電話をした。結果的に、他の選手たちも感化されて「俺も出よう」と。トラウトは(WBCを経験した選手から)どれだけ面白いかを聞いている。チームのキャンプに出るか、WBCに出るか。出場する各国で応援の仕方も違うし、そういう環境で野球をできるのも魅力で、「面白そうだから出てみよう」という空気になっているのだと思う。