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「WBCの盛り上がり? まったくない」米国記者が悲しむ現地の“リアルなWBC熱”…侍ジャパンの“練習配信”なんて「アメリカでは考えられない」
text by
阿部太郎Taro Abe
photograph byGetty Images
posted2023/03/07 17:08
大谷翔平の2打席連続弾に沸いた3月6日の京セラドーム大阪。WBC開幕前から日本が盛り上がるなか、米国記者に現地の“WBC熱”を聞いた
――WBCは、どうすればサッカーのワールドカップに近づけるのか。
これは自分の意見だが、球数制限などがあることもよくないと思う。投手の使い方は、国によって大きな差が出る。日本なら、点を取られないなら、100球を大きく超えても続投させることもある。そういった国ごとの野球文化が出るのも、本来であれば魅力になる。球数制限を入れると、それがすべて画一的になる。なぜ選手を守っているのかというと、MLBのシーズンのために守っている。見ている人はそう思ってしまう。そういった制限なしで、誰であっても、トップのトップが本気で出られる大会になるのは、現状では難しい。
侍ジャパンの練習配信に「アメリカでは考えられない」
――日本では、MLBの選手が宮崎合宿に集まるかどうかも話題になった。合宿そのものも大きな注目を集め、選手たちの一挙手一投足が連日報道された。
侍ジャパンの打撃練習がYouTubeで配信されていた。アメリカでは考えられない。ワールドシリーズですら練習は配信されない。そういうものを見せるというのは、ニーズがあるからだろう。それだけ、日本にとって野球は大事なもの。一方で、現在のアメリカの野球は「地区スポーツ」になっている。ドジャースの選手はロサンゼルスでは知られているが、全国的に知られている選手はいない。全米で流れるCMに出る選手もいない。アーロン・ジャッジが去年ヤンキースで活躍したが、今、本当のスーパースターは大谷だけだと思う。NFLのトム・ブレイディ、NBAのレブロン・ジェームズ……そういった選手が野球のアメリカ代表にはいない。
――今後、WBCはどうなっていくと思うか。
何かのきっかけで、お金より大切なものにならなければ難しいだろう。そうじゃないと、値段をつけた時点でビジネスになってしまう。お金以上のものだという認識があれば、誰もがそれに憧れる。大谷はイチローらが活躍する姿を見て、「WBCに出たい」というイメージができたと思う。そんな子供はアメリカにはほとんどいない。そういった夢は、価値がつけられないものだ。子供たちに夢を見させる大会にならなければいけない。
今、アメリカで野球をやっている子供はワールドシリーズが頭に入っている。あるいは、とても大きな契約を取ること。WBCは入っていない。トップの選手が出て、トップの選手が活躍してこそ、WBCが夢や憧れになる。今回、アメリカから有力な選手が出場するのはいいことだ。例えば、プレーオフにほとんど出たことがないトラウトが大活躍したら……WBCに対する認識も、少しずつ変わっていくかもしれない。
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