セビージャを経てバルサ黄金期の一員に

　2001年には18歳で念願のプロ契約を結び、すぐに試合に起用されて超攻撃的SBの片鱗をのぞかせた。2003年、スペインの中堅クラブであるセビージャへ。すぐにレギュラーとなって2005-06シーズンから2季連続のヨーロッパリーグ制覇に貢献した。スペインリーグ屈指の右SBへと成長し、2008年、名門バルセロナの一員となる。FWメッシ（現パリ・サンジェルマン）、MFイニエスタ（現ヴィッセル神戸）ら名手と共に黄金時代を築き、在籍した8シーズンで23ものタイトルを集めた。

バルサ時代　©Takuya Sugiyama

　2016年以降、ユベントス、パリ・サンジェルマン、サンパウロを経て2021年11月にバルセロナへ復帰。しかし、すでに全盛期を過ぎていて出場機会が少なく、昨年7月、プーマスへ移籍した。

　ブラジル代表の一員としては、2010年、2014年、2022年のW杯3大会に出場した。

　2010年大会では右SBの控えだったが、MFとして5試合すべてでピッチに立った。 2014年大会は右SBのレギュラーとして迎え、最初の4試合にフル出場。しかし、プレー内容が思わしくなく、以後3試合は先発を外れ、チームの敗退をベンチで見届ける悔しさを味わった。 2018年大会は絶対的レギュラーとしての活躍が期待されたが、開幕直前にクラブ（パリ・サンジェルマン）の試合で故障し、無念の欠場を余儀なくされた。 

　しかし、2021年に開催された東京五輪に自ら志願して、オーバーエージ枠で出場。 主将としてチームを牽引し、準決勝まで中2日で決勝だけ中3日という超過密日程の中、全6試合にフル出場してブラジル優勝の立役者となった。 

　このうち延長戦が2試合あり、合計出場時間は600分。日本代表の主将で、やはり延長戦2試合を含む6試合にフル出場したCB吉田麻也をして、「僕よりずっと年上なのに出ずっぱりで、優勝を達成して本当にすごい」と言わしめた（注：当時、吉田は32歳11カ月でアウベスは38歳3カ月）。 

　母国メディアも、「もしアウベスがいなければ、ブラジルの2大会連続優勝はありえなかった」と称賛した。 しかし、その後はスピードと運動量の低下が顕著となり、2022年W杯南米予選は17試合中4試合に出場しただけ。大会前最後の強化試合にも招集されず、出場は絶望的と思われた。

　しかし、アウベスは諦めなかった。クラブ（プーマス）で出場機会を増やして次第にコンディションを高めると、シーズン終了後も古巣バルセロナに頼み込んでBチームの練習に参加するなど猛アピール。不可能と思われたW杯招集を勝ち取り、グループステージのカメルーン戦にキャプテンマークを巻いてフル出場した。 

「双方の合意の上だった」と供述内容が二転三転

　これだけの偉大なキャリアを持つ男が、現在は刑務所の独房に繋がれており、いつ下るとも知れない判決を待っている。

　1月20日にバルセロナの警察から取り調べを受けた際、当初は「そんな女性なんか知らないよ」とシラを切っていた。しかし女性が「暴行された際、彼の下腹部に三日月のタトゥーがあるのを見た」と証言したと聞いて、「彼女とは、ナイトクラブのトイレの前で偶然会った。でも、何の接触もしていない」。さらに、DNA鑑定の結果、女性の衣服に付着していた精液が彼のものだったと知らされると、「その女性とトイレで性行為をしたのは事実だが、双方の合意の上だった」と供述内容を二転三転させた。このため警察が疑惑を強め、裁判所から判決が下るまでの間、バルセロナ郊外の刑務所へ収監されることになった。

アウベスを連行したパトカー　©Getty Images

　その後、捜査が進展し、ナイトクラブの防犯カメラの録画映像によって、まず女性がトイレに入り、その後を追ってアウベスが続き、約15分後、アウベス、女性の順で出てきたこと、女性がナイトクラブの従業員に泣きながら「彼にひどいことをされた」と訴えたこと、クラブの責任者がすぐに警察を呼んだがアウベスはすでに店から出ていたこと、問題の女性と一緒にいた2人の女性も「アウベスに体を触られた」と警察に訴えたことなどが明るみに出た。

「スペインの裁判所がダニ・アウベスを刑務所へ仮収監」（1月20日の日刊紙「コレイオ」電子版）

所属クラブは即契約解除、私生活にも暗い影

　事件を知ったプーマスは即座にアウベスとの契約を解除し、さらに契約不履行で訴えを起こした。また、個人スポンサー3社も契約を打ち切った。

　この事件は、もちろん彼の私生活にも暗い影を落としている。

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